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【政務活動費】使徒基準や支給金額、廃止の議論、板橋区・神戸・福岡など自治体の事例も紹介!

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政務活動費とは?公開されている?

政務活動費をご存じでしょうか?

政務活動費を簡単に説明すると「地方公共団体の議会の議員に調査研究などの活動に必要な経費が支給される」というものです。

そこで、本記事では政務活動費に関する基本的な知識と政務活動費の問題点などについてご紹介します。政務活動費を理解して、地方公共団体の運営体制の問題点について理解を深めましょう。

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政務活動費とは?

政務活動費とは、「地方公共団体は、条例で定めるところより、議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部を交付される」というものです。概要は以下の通りです。

  • 交付対象:議員又は会派
  • 交付対象・額・方法・充当可能範囲:条例で規定
  • 交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収支報告書を議長に提出
  • 議長は政務活動費の使途の透明性の確保に努める

引用:総務省|政務活動費について|https://www.soumu.go.jp/main_content/000675283.pdf

政務活動費の目的・使用先・公開方法

政務活動費の目的は議会の議員の調査研究その他の活動に必要な費用を支給し、議員の活動基盤を支えることです。

では、その使用先と公開方法はどうなっているのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

まず、使用先は大きく分けて「会派・議員としての活動」と「調査研究活動」に分けられます。

そして、「会派・議員としての活動」にあたるのは「会派・議員としての活動のうち、調査研究活動と認められないもの」、「調査研究活動」にあたるのは「議員・会派による広報活動 ・会派による会議等のうち、調査研究活動と認められるもの」となります。

引用:総務省|政務活動費について|https://www.soumu.go.jp/main_content/000675283.pdf

続いて、公開方法は政務活動の交付を受けた会派または議員が、条例の規定に従って政務活動費に係る収支報告書を議長に提出する形です。

国民が閲覧できる形で公開されるかは地方自治体の規定によって異なります。

政務活動費の導入経緯

政務活動費が導入されるきっかけとなったのは1999年の「地方分権一括法」の成立です。地方分権一括法の成立により、国から地方自治体に権限が移されることになり、地方自治体の自立が必要となりました。そこで、地方議会が住民の要望に答え役割を充分に果たしていくためには、議会を構成する議員の活動基盤の強化が必要だと言われるようになったのです。

そして、2000年5月、第147回国会において議員立法で地方自治法が改正され、政務活動費の前身となる「政務調査費」の交付に関する規定が整備されました。以上の流れで政務活動費が導入されたのです。

各地方議会の政務活動費

では、各地方議会で実際に支給されている政務活動費の金額や使用用途はどのようになっているのでしょうか?

本記事では板橋区、神戸市、福岡市、長浜市の政務活動費について解説します。

東京都板橋区の政務活動費

板橋区の政務活動費の支給金額と用途は下記の通りです。

支給金額

  • 会派への交付:毎月1日における当該会派の所属議員数に月額18万円を乗じて得た額を交付します。
  • 議員への交付:毎月1日に在職する議員に対して、月額18万円を交付します。

用途

  • 調査研究費 
  • 研修費 
  • 広報費 
  • 広聴費 
  • 要請・陳情活動費 
  • 会議費 
  • 資料作成費 
  • 資料購入費 
  • 人件費 
  • 事務所費 
  • 事務費 

引用:板橋区|政務活動費とは|https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kugikai/seimukatsudo/1011955.html

板橋区の議員定数は46人。議員報酬は600,000円となっています。

兵庫県神戸市の政務活動費

神戸市の政務活動費の支給金額と用途は下記の通りです。

支給金額

  • 議員1人当たり月額38万円を会派に対して、交付します。会派に所属していない議員については、議員個人を1人会派とみなして支給
  • 所属議員5人以上の会派が、会派専属の政務調査員を配置している場合は、政務調査員1人につき月額34万円の範囲内において規則で定める額を加算します。

用途

  • 調査委託費  
  • 管外調査費  
  • 要請・陳情活動費  
  • 会議研修費  
  • 資料購入費  
  • 広報費  
  • 広聴費  
  • 経費
  • 交通費  
  • 人件費  
  • その他の経費  

引用:神戸市会|政務活動費 概要|https://www.city.kobe.lg.jp/a91127/shise/municipal/jyouhoukoukai/seimukatudouhi/seimukatudouhi.html

神戸市の議員定数65名。議員報酬は930,000円となっています。

福岡県福岡市の政務活動費

福岡市の政務活動費の支給金額と用途は下記の通りです。

支給金額

会派に所属する議員は、1人あたり35万円を満額会派に支給する形と、9万円を会派・26万円を議員個人に支給する形のどちらかを選択できます。

また、会派に所属しない議員に関しては、議員個人に26万円/月が支給されます。

用途

  • 資料作成費
  • 資料購入費
  • 研究研修費
  • 広報費
  • 広聴・住民相談日
  • 要請・陳情活動費
  • 会議費
  • 補助員等雇用費
  • 調査旅費
  • 事務所費
  • 諸事情費

引用:福岡市|政務活動費|https://gikai.city.fukuoka.lg.jp/info/active

福岡市の議員定数は62名。議員報酬は880,000円となっています。

滋賀県長浜市の政務活動費

長浜市の政務活動費の支給金額と用途は下記の通りです。

支給金額

  • 議員1人あたり月額2万円を交付しています。使わなかった費用および対象とならなかったものについては返還が義務づけられています。」

用途

  • 調査研究費  
  • 研修費  
  • 会場費
  • 資料作成費  
  • 資料購入費 
  • 広聴費  
  • 要請・陳情活動費  
  • 事務費  
  • その他の経費  
  • 上記以外の経費で会派等の行う調査研究その他の会派等の活動に要する経費

引用:長浜市|政務活動費とは|https://www.city.nagahama.lg.jp/0000000642.html

長浜市の議員定数は22名。議員報酬は月額370,000円となっています。

政務活動費に関する訴訟事例

2015年に山形県で当時の県議会議員に支給された、政務活動費の一部に違法な支出があったとして、市民団体が返還を求める裁判を起こしました。

判決は、1審の山形地方裁判所が一部で違法な支出があったと認め、当時の議員のうち、17名に支給された合わせて125万円余りを返還するように命じ、判決が確定しました。

政務活動費の問題

政務活動費は主に下記の2つの問題が指摘されています。

  • 政務活動費の不正利用
  • 政務活動費の使途の公開が進まない

それぞれについて詳しく解説します。

政務活動費の不正利用

政務活動費の不正利用は複数の地方自治体で発生しています。2014年には兵庫県議が1年間で195回の日帰り出張を行い、約300万円を受けた事例が発生しました。そして、2016年には富山市議会で政務活動費に関わる領収書の捏造や改ざんが発覚したという事例も発生したのです。

このように、政務活動費の用途は決まっているものの抜け道的に不正利用する事例が発生しているのです。

政務活動費の使途の公開が進まない

また、政務活動費の使途の公開が進まないことも問題です。政務活動費は「交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収支報告書を議長に提出」ことが決まっています。しかし、国民に分かる形で公開するかは各地方自治体の規定によって異なります。

そのため、領収書や会計帳簿などの書類をネットで公開していない地方自治体もあるのです。透明性が必要となる政務活動費において使途の公開が進まない点が問題だとされています。

政務活動費はいらない?無くすべき?

では、本当に政務活動費は必要なのでしょうか?まず、政務活動費の問題として解説したように政務活動費は不正利用や使途の公開が進んでいないということがあります。そして、透明性が担保されることが政務活動費の条件です。

そのため、政務活動費が正しく利用されず、不透明な状態で運用されることは「議会を構成する議員の活動基盤の強化」されるという意図に合致しません。そのため、政務活動費は無くすべきではないかという意見が上がっているのです。

政務活動費に関する政治改革の取り組み

すでに政務活動費を廃止している自治体もあります。

本記事では小野市と泉南市の事例をご紹介します。

小野市議会の事例

小野市議会の政務活動費廃止の事例は下記の通りです。

2016年12月定例市議会において、議員提出議案として「小野市議会政務活動費の交付に関する条例を廃止する条例」を提案し、全会一致で可決しました。これにより、2017年4月分から小野市議会議員に対する政務活動費の交付はなくなりました。

引用:小野市議会|政務活動費(廃止)|https://ono-sigikai.jp/?id=1

泉南市議会の事例

泉南市議会の政務活動費廃止の事例は下記の通りです。

2016年第1回臨時会において、議員提出議案として「泉南市議会政務活動費の交付に関する条例及び泉南市議会政務活動費の交付に関する条例の臨時特例に関する条例を廃止する条例」が提案され、全会一致で可決されたことから、2016年8月分より政務活動費が廃止となりました。

引用:泉南市議会|政務活動費の廃止について|https://gikai.city.sennan.osaka.jp/17396

まとめ

本記事では政務活動費に関する基本的な知識と関連する問題などについて解説しました。

政務活動費は本来「議会を構成する議員の活動基盤の強化」によって、市民の要望に答えられる地方自治体の形成を意図して支給されています。しかし、政務活動費の不正利用や使途の公開が進まないなどの問題も指摘されています。

政務活動費や地方議会の報酬がどのような制度であるべきか、注目して行くことが必要なのかもしれません。

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