【日本の選挙制度まとめ】衆議院・参議院議員・知事・市長の選び方は?
小選挙区・比例代表など、日本の現在の選挙制度について
今回は国や地方の政治家を選ぶ選挙の制度に関してまとめていきます。まずは、選挙を通じて政治を考えるということが、政治を知る上で重要になってくると思います。そこで今回は日本の選挙制度をなるべくわかりやすく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
日本の選挙の分類
日本全国では、毎年様々な選挙が行われていますが、大きく分けて3つに分けることができると言えるでしょう。国会議員を選ぶ選挙、首長(都道府県知事、市区町村長)を選ぶ選挙、地方議員を選ぶ選挙です。それぞれの選挙の仕組みを見ていきましょう。
国会議員を選ぶ選挙
まずは、国会議員についてみていきましょう。国会議員とは、国会と呼ばれる主に国の法律をつくる会議に参加する議員のことです。三権分立でいう立法権に当たります。
日本の国会は、衆議院と参議院で分かれており、それぞれの議員は別の選挙で選ばれます。衆議院議員は任期4年(解散あり)で小選挙区比例代表並立制で選ばれ、参議院では任期6年(解散なし)で中選挙区と比例代表制で3年ごと半数が改選されます。
衆議院議員選挙
衆議院議員選挙は総選挙とも呼ばれ、4年間の任期満了によるときと、衆議院の解散に伴い行われるときがあります。なお、どちらのパターンであっても衆議院議員の選ばれ方は変わらず、小選挙区制と比例代表制を合わせた形になります。衆議院議員の定数は465人で、小選挙区での定数が289人、比例代表での定数が176人です。
小選挙区(定数289人)
選挙区制度では、立候補した複数の候補者の中から、ふさわしいと思う候補者を1人投票用紙に記入して、得票数の多い順番に選ばれます。小選挙区制度では、1番得票数の多い1人が選ばれます。一方で、中選挙区・大選挙区制度では、決められた選挙区から得票数の多い複数人の代表が選ばれます。
なお中選挙区では2から5人、大選挙区では6人以上を選ぶとされる場合が多いですが、中選挙区と大選挙区に明確な定義はなく、小選挙区と中選挙区・大選挙区の違いを把握しておくだけで大抵は問題ありません。
衆議院議員選挙では、〇〇県第△選挙区といった形で区割りをされており、東京1区・大阪5区といった形で呼ばれることも多いです。各都道府県での小選挙区の数は以下の地図のようになっており、なるべく小選挙区ごとの人口が偏らないように、人口の推移によって定期的に改定されています。
参考:次回衆議院議員選挙以降の区割り改定について:https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyos/news/senkyo/shukuwari/shukuwari4.html
比例代表(定数176人)
衆議院議員選挙では、小選挙区での候補者氏名を記入する投票用紙とは別に政党の名前を記入する投票用紙もあります。比例代表制度では、決められた選挙区での政党の得票数を元に、政党内の名簿の順番に当選者を決めていく選挙制度です。衆議院での、比例代表の選挙区は一般的にブロックと呼ばれます。東京都ブロック、南関東ブロック、中国ブロックといった形です。ブロックの分け方と各ブロックの定数に関しては、下記の表をご覧ください。
つまり、選挙区では「人」を選ぶのに対して、比例代表は「政党」を選ぶ方式であると言えます。
衆議院議員選挙では、拘束名簿式と呼び、政党が名簿の順番を決めることができます。最初に各政党に得票数に応じて議席が割り振られ、政党が決めた名簿の順番に当選者が決められていきます。なお、得票数から政党への議席の割り出し方はドント式が用いられます。
また、小選挙区と重複して立候補した人は同率の順位にすることもでき、同じ順位内で、惜敗率の高い順番に名簿の順番を決めていきます。惜敗率とは、小選挙区で当選をした候補者の得票率に対してどれだけの票を獲得したかという割合です。
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo03.html
ドント式とは?
ドント式とは、政党の得票数から各政党に与えられる議席数の計算方法です。1議席あたりに割り振られる得票数が多い順になるように考えられています。各政党の得票数を1,2,3,…と順番に整数で割っていき、その商(割り算の答え)の大きい順に当選とする方法です。
文章で説明して理解するのは難しいので、実際に具体例をみて考えてみましょう。
[例]
3つの政党があり、各政党の得票数が、X党が1200票、Y党が900票、Z党が300票で、当選する人数(定数)は5人とします。
得票数を1から順に整数で割っていくというのは、X党を例にみていくと、1200票をまず1で割って1200÷1=1200、次に2で割って1200÷2=600、それから3で割って1200÷3=400・・・というように続けていくことです。これを政党ごとに計算してみると、次の表のようになります。
表の数字を大きい順に並べていくと、1200→900→600→450→400→300→…となりますね。 定数が4人なら、数字が大きい順に5番目までが当選になります。
つまり、X党が3議席、Y党が2議席、Z党は0議席です。
計算するのは、当選者が全員決まるまでです。今の例でいえば、「1200→900→600→450→400→300」までで当選者の5人が決まるので、それ以降の計算は必要ありません。
参考:https://chu.benesse.co.jp/qat/3513_s.html
比例復活とは?
ニュース等で、比例復活という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?衆議院議員選挙では、参議院と異なり、小選挙区に出馬をした候補者が比例代表に重複して立候補することができます。小選挙区で落選した候補者でも、比例代表として当選することができます。各政党は重複立候補する候補者の名簿順位を同率にして、惜敗率を競わせることによって、厳しい選挙区の候補者に対しても活動を活発化させたり、比例票の獲得を目指したりします。
参議院議員選挙
参議院議員は解散がなく、参議院議員選挙は、6年間の任期満了のタイミングに行われ、3年ごとに半数ずつ改選されます。中選挙区制と比例代表制を合わせた形になります。参議院議員の定数は248人で、選挙区での定数が148人、比例代表での定数が100人です。3年ごとにある選挙につき、半数の選挙区74人、比例50人の124人ずつ改選されます。
中選挙区(定数148人・3年ごとに74人が改選)
参議院の中選挙区制度では、立候補した複数の候補者の中から、ふさわしいと思う候補者を1人投票用紙に記入して、得票数の多い順番に各選挙区ごとの定数だけ選ばれます。
基本的には都道府県ごとに区割りをされており、定数は東京都の12人(1回の選挙で改選されるのは6人)が最大で、一人区(定数2人、各選挙で1人ずつ改選)も多くあります。また、鳥取県・島根県、徳島県・高知県はそれぞれ2県の区域が選挙区となります。
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo03.html
比例代表(定数100人、3年ごとに50人が改選)
参議院議員選挙でも、比例代表制が取られています。参議院議員選挙では、選挙区を分けられておらず、全国で一つの選挙区として扱われます。そのため、全国比例、全国区とも呼ばれます。
衆議院と違うのは、非拘束名簿式となっており、政党が名簿の順番を決めることはできません。その代わりに政党名だけでなく比例名簿に載っている個人名を記入することができ、全国で記入された個人名の多い順番に政党ごとの比例名簿の順番が決められます。その後の各政党に割り振られる議席の数は、衆議院議員選挙と同じくドント式となっています。
特定枠
2018年の公職選挙法改正から導入された比較的新しい制度で、非拘束名簿式の名簿とは切り離して、各政党が優先的に当選させたい候補者を決めることができるようになりました。特定枠の候補者は、個人名の得票数に関係なく名簿の順番に当選が決まります。この制度を使うか、何人に適用させるかは各政党が自由に決めることができます。初めて導入された2019年の参議院議員選挙では、3つの政党・政治団体から合わせて5人が特定枠で立候補をし、このうち4人が当選しました。
参考:https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/knowledge-03/
首長選挙(都道府県知事・市区町村長)
ここからは、地方の選挙についてみていきます。都道府県知事・市区町村長のことをまとめて首長と呼びます。首長は、その地方自治体全域から一人選ばれます。自治体全域の住民が投票用紙にふさわしいと思う人の名前を書いて、一番得票数が多い人が当選となります。
4年間の任期満了だけでなく、辞職、住民からの直接請求(リコール)による解職、不信任決議による失職、死亡などでも選挙が行われるときもあります。
地方議会議員選挙
都道府県や市区町村で、首長とともに二元代表の役割を果たすのが、地方議会(都道府県議会・市区町村議会)です。基本的には、4年間の任期満了に伴い行われ、1回の選挙で議員全員を選びます。
都道府県議会・政令指定都市では、人口に合わせて選挙区と定数が決められ、その他の市町村長は基本的に全域を選挙区とされています。定数や選挙区に関しては、地域事情も考慮して各自治体の条例によって決められます。
地方議会選挙には、その自治体に3ヶ月以上居住している25歳以上が立候補できます。
参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000451018.pdf
供託金
各選挙に立候補するためには供託金を支払う必要があります。これは当選する意思のない人が無責任に立候補するのを防ぐためにあります。一定の金額を預け、定められた得票率を超えなければ没収されてしまいます。
各選挙における供託金と、その没収点は下記の表のようになります。
参考:https://www.yomiuri.co.jp/election/local/20230407-OYT1T50133/
選挙運動期間
各候補者は、定められた選挙運動期間にのみ選挙カーでの連呼やポスターの貼り出しといった選挙運動を行うことができます。
- 衆議院議員選挙:12日間
- 参議院議員選挙・都道府県知事選挙:17日間
- 政令指定都市の市長:14日間
- 都道府県議会議員選挙・政令指定都市の市議会議員選挙:9日間
- 市長・市議会議員選挙:7日間
- 町村長・長村議会議員選挙:5日間
(参考:公職選挙法33条)
しかしながら、特定の候補者の当選を目的としない政治活動として、政党や政治団体の活動を選挙運動期間前から行うというのが実情です。
参考:https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/qa/qa-katudou/
選挙権と被選挙権
現在の選挙制度では、18歳以上から選挙で投票することができます。投票する権利のことを選挙権、反対に選挙に立候補する権利(投票される権利)のことを被選挙権と言います。
被選挙権は、参議院議員・都道府県知事で30歳、その他の選挙では25歳以上の国民に与えられます。
また、地方議会議員選挙では、3ヶ月以上同一の市区町村に住んでいる必要があります。(居住要件)
まとめ
今回は日本の選挙制度についてまとめてみました。選挙制度を知り、自分がどの選挙に投票できるのかを理解することで、投票権を無駄にせずに投票といった形で国や地方自治体に意見を伝えることができます。
参考になるサイト
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo03.html