社会・環境

【あたらしい人権】いつから?訴訟例・種類・憲法に明記するメリット・対立など

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あたらしい人権とは?幸福追求権・環境権などを解説!

日本国憲法では保障されていない人権が「新しい人権」として最近話題になっています。具体的に新しい人権とは何なのでしょうか。今回は新しい人権とは何なのか詳しく解説していきます。

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新しい人権とは?

そもそも新しい人権とはどのような権利のことを指すのでしょうか。まずは新しい人権の定義について見ていきましょう。

新しい人権って?

日本国憲法に規定されていない人権のこと。日本国憲法が制定されたときには想定されていませんでしたが、その後の社会状況の変化によって憲法第13条の幸福追求権と第25条の生存権を根拠として、憲法で保障するべきだと考られるようになりました。憲法改正によって憲法に明記すべきであるという声と、現行の憲法のもとで法律をつくって対応するべきであるという声があり議論が行われています。

新しい人権はいつから話題に?

1950年代頃に日本が高度経済成長を迎え、社会状況が変わっていく中で、憲法に定められている人権以外にも、環境権やプライバシー権などの人が人らしく生きるために必要不可欠な自由があるのではないか、これらを憲法に定められている人権と同じように保護すべきではないか、と考えられるようになりました。こうした状況が「新しい人権」が登場した背景と言われています。

新しい人権の種類

新しい人権にはさまざまなものがあります。今回は代表的な人権をいくつか取り出してご紹介します。

プライバシー権(自己情報コントロール権)

プライバシー権とは、自分に関する情報を誰に公開するかをコントロールする権利、すなわち「自己情報コントロール権」であると考えられています。2003年に成立した個人情報保護法及び行政機関の個人情報保護に関する法律は、個人情報を収集する事業者に対し、個人情報を収集する際に利用目的を特定すること、利用目的以外に個人情報を利用する場合や個人情報を第三者に提供する場合には個人の同意を要することなどを定めており、個人のプライバシーが保護されています。

自己決定権

自己決定権とは、自分に関する事柄を自分で決める権利のことをいいます。宗教上の理由から、どのような治療を望み、あるいは拒否するかという選択は、個人の人としての生き方に関わる問題です。

このような個人の生き方に深く関わる自己決定権については、「新しい人権」として保護する必要性が高いといえます。一言で自己決定権といっても、保護の必要性が高いものから低いものまで様々なため、個別の内容ごとに「新しい人権」として保護すべきかどうかを考えることが必要といえます。

肖像権・パブリシティ権

自己情報コントロール権の派生的なものとして、肖像権があります。これは、自分の姿をみだりに他人に撮られない権利のことをいいます。また、芸能人には一般の人にはない、顧客を呼ぶ力(顧客吸引力)があると考えられ、このような顧客吸引力を「パブリシティ権」といいます。

名誉権

名誉権とは、人の社会的評価(評判、信用)に対する権利です。たとえば何の理由もなく、ある人について「あの人は万引きの常習犯だ」などということは、その人の社会的評価を低下させるといえるので、名誉権を侵害するものです。政治家や犯罪に関することなど、公的な関心事については、公共の利益を図る目的があり、指摘した内容が真実であるか、真実であると信じることについて相当な理由がある場合には、違法行為には当たらないとされています。

環境権

環境権とは、良好な環境の下で生きる権利をいいます。日本では、高度経済成長期に、環境が破壊され、人々の生命や生活が脅かされる状況がありました。こうした状況を踏まえ、「良質な環境」が人が人らしく生きるための前提であると認識されるようになり、環境権という権利が考えられるようになりました。1993年に成立した環境基本法は、「環境の保全」が「人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないもの」であると共に、環境が「人類の存続の基盤」であることを確認した上で、政府は「現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない」として、国に「良質な環境」を保つ義務を定めています。

環境権の具体的な権利として、次のような権利などがあります。

日照権

日照権とは、建物内の日当たりを確保する権利です。

日照権を直接的に定めた法律はありませんが、新しく建物を建てる際に守らなければならない建築基準法は、個人の日照権を前提として、斜線規制や日影規制について定めており、新しく建物を建てるにあたって、近くの建物に住む人の日照権を保護しようとしているものと考えられます。

騒音に対する規制

一定の限度を超える騒音にさらされると健康被害を生じることが分かり、様々な規制が生まれました。たとえば東京都では、空港・新幹線・工場・建設工事・その他一般に分けて、それぞれ騒音に対する規制について定めた環境基準が作成されています。

新しい人権関係の訴訟・裁判例

過去には何度か「新しい人権」についての裁判が行われています。今回は有名な裁判例をいくつか紹介します。

「エホバの証人」輸血拒否事件

「エホバの証人」では、血を避けることによって身体的、精神的に健康でいられると信じられており、ひとたび人の外に出た血を体に取り入れること、すなわち輸血を受けることはできないという信念を有しています。

そのため、原告は肝臓の腫瘍を摘出する手術を受けるにあたって、輸血をしない病院を探し、被告の医師らが勤務する病院で手術を受けることを決めました。しかしこの病院では、患者が「エホバの証人」である場合には、原則として輸血を行わないことにするが、輸血以外に救命方法がない事態に陥った場合には、輸血を行うという方針を採っていました。

それにもかかわらず、この方針を原告である患者に事前に十分説明しませんでした。裁判所は事前に方針を説明しなかった医師らには、患者である原告の自己決定の機会を奪った違法があるとして、原告の損害賠償請求を認めました。

大阪国際空港公害事件

大阪国際空港にジェット機の離着陸が増え始めた1964年、騒音に関する環境基準が定められていたにもかかわらず、その騒音は環境基準を大きく上回るものでした。

1971年、周辺住民は、空港の騒音により健康が害されている他、家族との会話・団らん、テレビの視聴、睡眠等が妨げられていると主張し、環境権を根拠に夜間の発着の差し止めを求めました。裁判所は法理論的な問題から、そもそも空港の発着に関して「人格権」を根拠とする民事上の差し止め請求はできないとして差し止め請求を認めませんでした。

ただ、この事件をきっかけに「環境権」がクローズアップされ、人の生活を取り巻く環境が人が人らしく生きるために重要であるという点が再認識された点で、重要な判決でした。

新しい人権を憲法に明記すべきか?

現在、時代の変化への対応や人権保障の明確化等を理由に憲法への明記を求める意見と、現在の憲法の規定に基づく立法措置で対応できるとの意見が出され、憲法に明記すべきかどうか議論されています。

明記すべきという意見

  • 現行憲法の解釈では十分には対応できない
  • 立法や裁判の基準が明確化する
  • 国民に対する教育効果が期待できる

明記に慎重な意見

  • 現行憲法の人権規定によって対応できる
  • 現実的な権利の保障においては、憲法ではなく法律の整備が必要
  • 人権のインフレ化(むやみに人権を増やしていくと人権の価値低下や人権同士の衝突を引き起こしてしまうこと)を招く懸念がある

人権の対立

すべての自由を新しい人権で保護しようとすると、人権が無限に考えられます。一方の人権を優先すれば、他方の人権が制約されることもあります。これらの「人権」相互の関係を調整する必要がありますが、人権が溢れかえってしまうと多くの場面で、「人権」が制約される結果となり得ます。その結果として「人権」の価値が低下するおそれがあります。

まとめ

現在、新しい人権を憲法として保障すべきかの議論が進められています。しかし、新しい人権を憲法や法律に規定することにはメリットもデメリットも存在します。

どのような制度設計をすることが、多くの国民にとってより生きやすい環境になるのでしょうか。今後の政府の判断に注目せざるを得ません。

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政経百科編集部
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