社会・環境

【排除アート】ホームレス対策などの目的や実例、賛成・反対意見などを解説!

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意地悪ベンチなど、排除アートとは?何がダメ?メリットや批判を考える

街中でちょっと一休みしたいな、と感じたとき、近くに休めそうな場所がなかった、あるいは座れそうな場所があったとしても座り心地が悪かった、という経験はありませんか?このように、人の居場所を奪うようにデザインされたものは「排除アート」と呼ばれます。最近では新宿区の「意地悪ベンチ」がSNSでも話題になっています。排除アートとは、誰が、何を排除しようとしたものなのでしょうか?

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排除アートとは?

「排除アート」に明確な定義はありませんが、一般的には、駅近辺や公園などの公共空間において、人がそこで休んだり長居したりすることを妨げるようなデザインを指すと考えられています。ホームレスの排除を目的としたものが多く、地面に設置されたオブジェのような突起物や、仕切りがあって横になることができない、あるいは背もたれがなく座面の幅もせまいベンチなどが代表的で、あえて居心地が悪くなるよう設計されています。

日本語では排除”アート”というのが一般的な呼び名ですが、この呼び方には批判もあります。というのも、英語圏では”hostile architecture(敵対的な建築)”や”defensive urban design(防御的な都市デザイン)”などと呼ばれ、芸術作品としてのアートとは区別されるものだからです。

排除アートの例

排除アートは、気付かないうちに都心部で特に多く設置されているといわれますが、実際にはどのようなものが排除アートと呼ばれているのでしょうか。ここでは、SNSで話題となったもの中心に、3つの事例を紹介します。

制作者まで声を上げた京橋のベンチ

2021年4月、「バンクシーが嫌がらせで設置するような代物」としてX(旧ツイッター)に投稿されたベンチが議論を呼びました。東京都中央区の京橋に設置されていたベンチで、一見すると、赤く塗られた木製のかわいらしいベンチなのですが、よく見ると座面にはいくつかの突起があります。そこで横になったり、人数や体格に合わせて広々使ったりすることはできそうにありません。このため投稿者は「排除ベンチ」と呼んだのでした。

この投稿は様々な意見が寄せられて話題となり、ついにはベンチの制作者が名乗り出ました。デザインを依頼された田中元子さんによると、制作側は最後まで突起の設置に反発したものの、ベンチを設置するビルの管理者から、ホームレス対策としてどうしても「手すり」は必要だと要求されたそうです。結果、苦肉の策として、問題のベンチには取り外し可能な突起がつけられました。

区長が反論した新宿区のベンチ

2024年3月には、東京都新宿区長のXでの投稿が議論を呼びました。新宿区内の公園に座りにくい「意地悪ベンチ」があると指摘した記事に反論するため、区長が「ユッタリと本も読め、お茶やカップも置けます」と自身がベンチに腰掛けた写真を投稿したのです。問題のベンチは、座面がアーチ状で背もたれもありません。区長の投稿には、子どもや高齢者が怪我をするかもしれない、体調不良の時に寝そべることができないなど、多くの批判が寄せられました。一方で、このベンチは騒音問題に対する住民の苦情に対処するために設置された、という経緯があり、肯定的に捉える意見もありました。

突起が散りばめられた駅前のオブジェ

排除アートとして最も有名なものの一つに、京王 井の頭線 渋谷駅前(東京都)に設置されたオブジェがあります。平らな面と山形に突き出た面が交互に配置され、しかも平面部分には無数の突起がついており、とても一休みできそうな場所とはいえません。一見すると前衛的なアートのようですが、これもホームレス対策として、人々をその空間から確実に排除するために意図的にデザインされたものだと考えられています。

排除アートへの肯定的意見

排除アートというなんだか怖そうな名前ですが、こうした建築物やデザインを支持する意見もあります。そこにはどんな理由があるのでしょうか。

治安維持のためには仕方がない

排除アートについて、有効なホームレス対策だと考える人は少なくありません。

たとえば、Xのある投稿では、大学の授業で「アンチ・ユニバーサルデザイン」として排除アートを紹介したところ、学生からは「ホームレスは怖いから、いなくなってくれると、多くの人が安心して利用できる」という、予期せぬ肯定的な意見が多数出た、とのことです。

また、座面がアーチ状で座りにくいベンチが設置された新宿区の公園の例では、夜中に酔っ払いが集まって騒ぐので困っていたが、ベンチが変わってからは静かになってよかった、という声もありました。多少座りにくくても、治安維持のためには仕方がないという意見です。

長く居座らせないことで、むしろ多くの人が利用できる

座面がアーチ状や網状だったり、または極端に幅が狭かったりと、座り心地の悪い「意地悪ベンチ」ですが、むしろ居心地が悪いからこそ一人当たりの利用時間が短くなり、多くの人が利用できると考える人もいます。上の大学講義の例と同じXの投稿では、学生から「多くの人が公平に利用できるよう、短時間利用を促すデザインにするのは、なかなか工夫されていて良い」といった意見も寄せられたことが明かされています。

排除アートへの否定的意見

賛成する意見がある一方で、排除アートは様々な批判の対象でもあります。どのような点が問題視されているのでしょうか。

ホームレスの根本的解決にはならない

排除アートはホームレスの排除を目的としたものが多いですが、その周囲からはホームレスがいなくなったとしても、ホームレスの人々自体がいなくなったわけではありません。目立つ場所から、目につきにくい場所に追いやっただけで、問題の根本的解決にはつながらないからです。行政は排除アートを利用して問題を「隠す」のではなく、そのための税金を福祉に充てるなど、問題に「向き合う」ことが必要だと指摘されています。

体調不良などの緊急時に使えない

ベンチに仕切りがあると、熱中症などで体調を崩して横になろうと思っても、ベンチに横たわることができません。また、災害が起こったときなど、非常時は特に横になって休める場所が必要になることがありますが、意地悪ベンチはそのようなベンチの柔軟な使い方を奪ってしまうことが懸念されています。

アートや緑化活動を隠れ蓑にしている

排除アートは、特定の人や目的を排除するという意図が、「アート」や緑化活動という名目で隠されていることも大きな問題とされています。東北大学の五十嵐教授によれば、日本には「よくわからないもの」をアートとして呼ぶ風潮があるそうです。変わった見た目のベンチやオブジェを設置すれば、隠された意図に関わらず人々は勝手に「アート」と呼びはじめるため、都合がよいというわけです。

また、2005年の愛知万博では、ホームレスが張っていたテントが一斉に撤去された後、その場所に「植物保護のため入らないでください」という看板とともに、たくさんの植物が植えられました。ホームレスが一掃されたという出来事を知らなければ、緑化活動という善良そうな目的以外は伝わりませんね。

まとめ

排除アートとは、主にホームレスなどを念頭に、あえて居心地の悪いデザインを用いることで、特定の人や目的を排除しようとするものです。

この記事では賛成・反対の双方の意見を紹介しましたが、公園などの公共空間が誰にとっても利用しやすいものとなっているかどうか、意図的に排除されている人はいないか、ぜひ考えるきっかけにしてみてください。

参考になるサイト

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政経百科編集部
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