【ヤングケアラー】意味定義、厚生労働省などの支援・解決策、海外事例など
ヤングケアラーとは?問題点をわかりやすく解説!
みなさんは、ヤングケアラーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
近年、ヤングケアラーが徐々に可視化されてきたことで、かれらが抱える問題が明らかになってきています。
この記事では、ヤングケアラーとはどんな人を指すのか、ヤングケアラーが生まれる原因、その現状について解説します。
ヤングケアラーとは?その定義
ヤングケアラー(young carer)とは、文字通りまだ幼いにもかかわらず家族の世話をしている子どものことです。
国によって細かい定義は違いますが、日本ケアラー連盟は、「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」と定義しています。
日本にヤングケアラーは何人いる?
三菱UFJリサーチ・コンサルティング(2020)の調査によると、中学生では約18人に1人、高校生では約24人に1人がヤングケアラーではないかと考えられています。各クラスに1~2人はヤングケアラーがいるという計算になりますね。
ただし、この調査はすべての子どもを対象としたものではないため、実際のヤングケアラーはさらに多い可能性もあります。
また、自身がヤングケアラーであると自覚している子どもは、「家族を世話をしている」と答えたうちたったの2%ほどで、ヤングケアラーという言葉自体「聞いたことがない」と答えた子どもは8割以上に上りました。
少なくない数の子どもが日常的に家族の世話を行っているという現実とは対照的に、ヤングケアラーという概念はあまり知られていないのです。
ヤングケアラーの人数の国際比較
それでは、海外のヤングケアラーの現状はどうなっているのでしょうか。
イギリスの場合
イギリスでは、身体的または精神的な症状、ドラッグやアルコールの依存症などをもつ家族や友人を世話をしている、18歳未満の子どもがヤングケアラーとして定義されています。
2021年の国勢調査によると、イングランドには約12万人のヤングケアラーがいると報告されています。
しかし、BBCが2018年に行った調査では、11~15歳だけでも国内には約82万人のヤングケアラーがいると考えられており、日本と同様に正確な人数の把握が難しいことがわかります。
アメリカの場合
アメリカでは、慢性的な病や障がい、精神疾患、高齢などにあてはまる家族の世話をしている、18歳以下の子どもがCaregiving Youthと呼ばれています。
呼び方は違いますが、意味するものはヤングケアラーとほぼ同じです。
American Association of Caregiving Youthによると、アメリカには約540万人のヤングケアラーがいて、これは全米の人口の約1.6%にあたります。
日本のヤングケアラーの実態
このように海外でも問題となっているヤングケアラーですが、そもそも本来ケア「される」立場であるはずの子どもたちが、ケア「する」立場になっているのはなぜなのでしょうか?
また、具体的にはどのようなケアを担っているのでしょうか?
なぜヤングケアラーが生まれる?
ヤングケアラーが生まれる背景には、家族の健康状態や家庭の経済状況が関係しています。
主な要因としては以下のようなものが挙げられます。
- 保護者が、精神疾患やアルコール・薬物などの依存症を持っている
- 高齢な家族、幼いきょうだいなどの家族構成
- 障がいのある家族
- 貧困等による長時間労働
こうした状況にあると、本来子どもを世話する立場であるはずの大人が、子育てどころか家事や自分の身の回りのことをするのも難しく、子どもがその代わりとならざるを得ないのです。
ヤングケアラーは誰をケアしている?
ヤングケアラーは、基本的に家族というとても身近な人の世話をしています。2021年に発表された三菱UFJリサーチ・コンサルティングの調査によると、世話を必要としている家族は、「きょうだい」が最も多く、次に「父母」、「祖父母」となっていました。
子どもにとっては自分の育った家庭が「普通」であり、それが世間一般とずれているかどうかはなかなかわかりません。小さいころから家事や家族の世話を当たり前に任されていると、子どもとしての権利が守られていないと自分で気が付くのは非常に難しいと考えられます。
ヤングケアラーはどんなケアを担っている?なぜ家族の世話が問題?
ヤングケアラーである子どもや若者は、主に次のような世話をしているといわれています。
- 家事:料理、洗濯、掃除、買い物など
- 介護:着替え、食事、移動、トイレの手伝いなど)
- 子守り:幼いきょうだいの世話、見守り
- 障がいのある家族の世話、見守り
- 労働:家計を支えるために働く
- 医療的なケア:薬の管理など
- 通訳:現地語を知らない家族のために言葉を訳す
- その他:金銭の管理、病院の付き添い
三菱UFJリサーチ・コンサルティングの調査によると、ヤングケアラーの子どもの多くは、これらのケアをほぼ毎日行っており、半数以上は一日あたり3時間以上も家族の世話に時間を費やしています。
そうなると当然、ヤングケアラーである子どもは、そうでない子どもに比べて自由に使える時間が大幅に減ってしまいます。
前述の調査でも、「宿題や勉強の時間が取れない」、「自分の時間が取れない」「睡眠が十分に取れない」「友達と遊ぶことができない」など、教育や健康、人間関係を築くための子どもたちの大切な時間を奪われてしまっていることが明らかとなっています。
国や自治体のヤングケアラーへの現状の対応
それでは、こうした問題に対して国や自治体はどのような対応をとっているのでしょうか?
ヤングケアラーの支援強化に向けた法改正
2024年6月、ヤングケアラーの支援を推進するため、子ども・子育て支援法の一部が改正されて、支援の対象として「ヤングケアラー」が初めて法律に明記されました。
支援の必要性や緊急性の高いケースを判断するため、国は、医療や福祉の専門機関、教育機関と連携していく方針を打ち出しました。
具体的には、生活保護世帯の世帯構成を確認したり、スクールカウンセラーを活用したりするなど、福祉・介護・医療の関係者、学校などを介して、ヤングケアラーを早期発見することを目指しています。
ピアサロン等イベントの開催
地方自治体では、ヤングケアラーの周知や、ケアラー同士の交流の場を設けることを目的に、ピアサロンなどのイベントが開催されています。
当事者が安心して体験を共有できる場をつくったり、ヤングケアラーであった過去や現在進行形で悩みを抱えている人を支援者につないだりするために有効な場として活用されています。
ヤングケアラーだと気付いたら?使える制度
自分はもしかするとヤングケアラーなのではないか、あるいは身近なあの子がヤングケアラーなのではないか、そのように思った場合はどうしたらよいのでしょうか?
地域によって受けられる支援は様々ですが、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーなど、学校にこうした支援者がいる場合は、まずは相談してみましょう。
悩みを打ち明けることがストレスの軽減になるだけでなく、自治体やNPOなど、専門家のいる支援団体につないでもらうことも可能でしょう。
ヤングケアラー問題にこれから求められる対応は?
それでは、今後ヤングケアラーの問題を解決していくためには、どのような対応が求められているのでしょうか?
問題の周知と早期発見
前にも述べた通り、ヤングケアラー本人にはその自覚ない場合が少なくありません。
このため、まずは学校や福祉関係者に研修を行うことでヤングケアラーについての周知を高め、子どもの小さなヒントを見逃さず、早期にヤングケアラーを発見することが必要です。
相談支援の拡充
先の調査では、ヤングケアラーのうち6割以上が「誰にも相談したことはない」と回答しました。
そこで、SNSなどを活用してオンライン相談窓口をつくるなど、誰でも気軽に相談できるような環境を整えることが求められています。
ケアすること自体が悪いわけではない
ヤングケアラーという問題の周知が重要である一方で、家族の世話をすること=悪いこと、ではないことに注意が必要です。
あくまで家事や家族の世話といった負担を、子どもが過度に負わされていることが問題なのであって、子どもらしい生活を送れる範囲内でお手伝いする分には全く問題ありません。
まとめ
この記事では、ヤングケアラーの定義や現状、支援策などについて解説してきました。
ヤングケアラーは家庭の状況に大きく影響を受けますが、その問題は「家族の問題は家族が解決しなければならない」という社会の価値観と無関係ではありません。
子どもが子どもらしい生活を送るために、社会全体で支える方法について、ぜひ考えてみてください。
参考になるサイト
- 一般社団法人 日本ケアラー連盟|ヤングケアラーとは|https://carersjapan.com/about-carer/young-carer/
- こども家庭庁|ヤングケアラーについて|https://www.cfa.go.jp/policies/young-carer
- NHK首都圏ナビ|ヤングケアラー 国がまとめた4つの支援策って?|https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20210601yc_a01.html