【三店方式】パチンコ店はなぜ摘発されない?その法的根拠や現状を考える
【解説】三店方式とは?いつから?換金所との関係性は?
みなさんは、「三店方式」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。もしかしたら、パチンコ店で遊んだ経験がある方ならば、頭の片隅にある言葉かもしれません。
現在の日本では賭博(ギャンブル行為)が禁止されていますが、公営ギャンブルは例外です。競馬、競輪、競艇などがこれに該当します。
しかし、パチンコは公営ギャンブルには該当しないため、「うちは賭博をやっていません」という建前が必要になります。その建前を維持する鍵が、今回解説する「三店方式」なのです。三店方式をとっていることにより、パチンコ店は賭博場ではなく、あくまで「遊戯施設」という位置づけになっています。
三店方式は、いつからはじまった?歴史的経緯と概要を解説!
ここからは、三店方式に関する歴史的経緯や実際の運用について解説していきます。
三店方式とは?
パチンコを遊んだことのない読者のために、パチンコの大まかなシステムから解説していきます。
まず、パチンコ店に入店する時に、客の現金とパチンコ玉を交換します。そして、客はパチンコ台で遊んでパチンコ玉を増やすことを目指します。パチンコ玉が貯まってきたら、店に頼んでパチンコ玉と「特殊景品(文鎮など)」とを交換してもらうのです。
この「特殊景品」はパチンコ店の中で使うことはできません。大体の場合、そのパチンコ店の近くに特殊景品を買い取ってくれる「古物商」(景品交換所)がいるので、その店に特殊景品を買い取ってもらい、現金に変えるという流れが一般的です。
この一連のパチンコ店の営業形態を、パチンコ店・景品交換所・景品問屋の三つの店舗があることから、「三店方式」と呼びます。
三店方式の歴史的経緯
日本におけるパチンコの歴史は、戦前から始まるものの、第二次世界大戦時に一度断絶していることから、戦後からの歴史に絞って述べたいと思います。
終戦直後にパチンコが大ブームとなった際、当時のパチンコの景品であったタバコの換金を行う業者が現れました。彼らは客とパチンコ店の間を仲介し、景品の煙草を安く仕入れ、高く転売することで利益をあげていました。
タバコの転売行為は規制されたものの、パチンコの景品が多様化するにつれて、景品転売の利権をめぐる抗争が業者間で激化。
このような事態を回避するために、1961年の大阪で、元警察官であった水島年得氏は「大阪方式」を考案しました。これが全国に拡大し、「三店方式」の名で呼ばれるようになったのです。
【三店方式】法的根拠は?
三店方式に関する法的な問題と実状はどうなっているのでしょうか。
賭博に関する法律
現在の日本において賭博は禁止されている行為です。刑法185条で、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。 ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定されています。
パチンコ店に関しては、三店方式をとっているために、賭博場ではなく遊戯施設という位置づけで営業しています。
遊戯施設では、「現金または有価証券類を商品として提供すること」「客に提供した商品を買い取ること」「遊戯の用に供する遊戯球(パチンコ玉)を客に店外に持ち出させること」などが禁止されています。
法律の抜け穴
そのためパチンコ店は、法律に引っかからないように、客に現金を提供しなければなりません。そのために用いる仕組みが三店方式なのです。特殊景品を提供するパチンコ店と、特殊景品を買い取る古物商は表向きは無関係であるため、取り締まりの対象にならないのです。
「パチンコ店が提供した特殊景品を買い取ってくれる古物商(景品交換所)が、たまたまパチンコ店の近くにある」という状況です。
パチンコ店はなぜ摘発されない?
パチンコ店が摘発されない理由は、前述したように、法律の噴け道をうまくかいくぐっているからです。あくまで賭博に関する法律で規制されているのは「直接パチンコ店が客に現金やそれに準ずるものを提供する」ことであり、パチンコ店がそれ以外の種類の景品を提供することは問題にならないのです。
また、特殊景品を買い取ってくれる古物商はパチンコ店と関係がないため、組織として一体ではなく、特殊景品を換金するかしないかも客の判断に委ねられているのです。
三店方式の問題点
ここでは、三店方式に関する問題について論じていきます。
本当に合法か?
そもそも三店方式が合法であるかどうか、長年議論が行われてきました。しかし、過去にパチンコ店を賭博として起訴した例はなく、裁判所がパチンコ店の三店方式が違法であるかどうかについての見解は示されていません。
ですが、実質的にパチンコ店と古物商が一体であり、特殊景品の入手と換金が一連した流れのもと行われているため、賭博に該当するのではないかとの見方も存在します。
特殊景品の価格に関する問題
特殊景品は、大抵の場合、カード状のプラスチックケースにわずかな量の金を封入したものとなっています。2007年の東京都において、金価格が上昇したため、パチンコ玉と交換して入手する特殊景品を換金せず、中の金を取り出して貴金属店に持ち込んだ方が多く稼げる、という現象が発生しました。
これを受け、金の流通を取り仕切る東京商業流通組合は、景品の価格を1円引き上げることで対応しました。
まとめ
パチンコの合法性を支えている三店方式。誕生してから数十年が経過している営業方式ですが、現在でも賛否が多いのが現状です。新たな法整備が必要なのか、今後も様々な議論があるでしょう。
参考になるサイト・資料
- 高知工科大学|長澤 海里|「特殊景品を廃止したときのパチンコ・スロット依存症者数減少への効果」|2019年度 経済・マネジメント学群 学位論文
- 同志社大学|鍛冶 博之|「パチンコホール業界の現代的課題と対策(I)」|「社会科学」第78巻
- 衆議院|質問第一七号|https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a185017.htm
- とりもと行政法務事務所|パチンコ屋さんの景品買取所うんちく その6「三店方式の実態(のオモテ)」|https://torioffice.com/blog/free-gift-purchase-place-6/