社会・環境

【救急車有料化】メリット・デメリットは?日本全国の事例や賛成・反対意見などを解説!

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茨城県や三重県松阪市で救急車が有料化!?救急車の「不要不急」対策となるのか?

緊急性の低い119番通報により、救急外来をひっ迫させているという現状があります。その中で救急車を呼ぶことに費用負担を求めるといった声が上がっています。

今回は救急車有料化について考えます。

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救急車の現行制度

まずは、救急車を呼ぶことやその中での医療行為に対しての現行制度を確認していきます。

救急車は原則無料!

日本で救急車を呼ぶことは、原則無料です。救急隊員に係る人件費、ガソリン代、医薬品や医療器具代などの経費がかかっていますが、これらは税金で賄われています。

救急車を利用する時にかかる費用

上述のように、救急車は原則無料で利用できますが、以下のような費用は患者側で負担する事になります。

  • 診療費、入院費(健康保険適用後の事故負担割合に応じて)
  • 薬代
  • 帰りの交通費

これらの、自分で病院にかかった場合にかかる費用は患者側で負担しなければなりません。

救急車経費の現状

令和4年版 消防白書によると、2021年度に救急車の出動件数は6,193,581件でした。

救急車が1回出動するのに必要な費用は、諸経費込みでおよそ45,000円といわれており、仮に600万回出動すると考えると年間2,700億円の費用がかかっています。

救急車の搬送時間

総務省の発表によると、いずれも全国平均で現場到着所要時間は約10.3分(2022年は約9.4分)、病院収容所要時間は全国平均約47.2分 (2022年は約42.8分)でした。

重症患者が、一命を取り留めるには1分でも早い処置が必要ですが、救急車需要のひっ迫が搬送時間や病院収容所要時間に影響が出ています。

三重県松阪市の事例

救急車関連の予算増加を抑えたり、重症患者の搬送をスムーズに行うために、緊急性の低い救急車利用を減らす取り組みの1つに救急車有料化が議論されています。

その中で、複数のメディアで三重県松阪市が救急車を有料化するといった報道が行われました。ここからは、松阪市の事例を見ていきます。

松坂地区(松坂市・多気町・明和町)の現状

松阪市によると、松阪地区(松阪市・多気町・明和町)では2023年の救急車の出動件数が16,180件と過去最多を記録しました。これを13台の救急車で対応しており、救急体制・救急医療がひっ迫し、「助かるはずの命が助からない」事例が発生することが考えられるとしています。

選定医療費とは?

2024年6月から救急車有料化といった見出しを付けられることが多いですが、実際には救急車の運行自体に対する費用を徴収するのではなく、「選定医療費」の徴収が2024年6月から始まります。

選定医療費とは、紹介状を持たずに大きな病院にかかった場合に7,700円以上(税込)を負担するといった制度です。2016年4月から選定療養費の徴収が義務化されています。

初期の診療は地域の病院やクリニック(かかりつけ医)で行い、高度・専門医療は大きな病院で行うという方針が理由です。

選定療養費の徴収

多くの病院では、救急車で来院した患者には、選定療養費を徴収していません。

しかし、松坂市では2024年6月1日から救急車を利用し、入院に至らなかった患者や災害患者などを除き、選定療養費を徴収することになります。

救急車有料化とよく報道されますが、救急車の運行自体にかかる費用を徴収するというより、自分で病院に来た患者は徴収されて救急車利用の患者が免除されていたものが同じように徴収されるようになるというのが正しい説明です。

茨城県の事例

茨城県では、7月26日に大井川知事が、緊急性が認められない場合に選定療養費を徴収する運用を始める考えを発表しました。

知事の定例会見によると、2024年12月から、茨城県内の200床以上の23の大病院に救急車で搬送され、緊急性が認められない場合に病院が「選定療養費」として、患者から7700円以上を徴収するとしています。

どのように緊急性を認めるかは、医療機関と県で協議を行い、統一的な基準を定めるとしています。

前述の通り、三重県松坂市での2024年6月から同様の取り組みが始められていますが、都道府県単位での救急車搬送に対しての選定医療費の導入は今回がはじめてとなります。

救急車有料化のメリット

ここからは、救急車有料化のメリットを考えていきます。

必要のない出動の削減

救急車の有料化により、緊急性の低い出動要請を減らすことができます。

それにより、救急車運行にかかる費用の削減、人手不足等によるスタッフの負担の削減、などが期待できます。

重症患者の搬送が円滑に行える

本来救急車の運行は、自力で病院に行くことが出来ない重症患者の搬送を目的にしています。

しかし、軽症者による利用や自力で病院に行ける患者の利用が増えると、必要な時に利用できず、本当に必要としている重症患者の搬送に支障が出てきます。

有料化で安易な利用をする人を減らし、重症患者の搬送を円滑にすることで助かる命が増えるといった意見もあります。

関連費用の予算削減

先述の通り、救急車の出動件数が多く多額の予算を救急車運行に使っています。

有料化することにより、1回あたりの税負担を減らしたり、緊急性の低い救急車搬送を減らすことで、予算の削減にも繋がります。

救急車有料化のデメリット

救急車の有料化に慎重な意見としては以下のようなものがあります。

本当に重症でも救急車利用を躊躇ってしまう

本当に必要な重症患者が、お金に余裕がないことを理由に救急車利用を躊躇ってしまう懸念があります。

お金を持っている人の命は助かるけど、お金のない人は助かる命も助からないといった社会になってしまうと懸念する人もいます。

お金に余裕のある人の安易な救急車利用は減らない

お金を支払っているという意識から、タクシーのように利用する人が増えたりして緊急性の低い出動は無くならないなどの指摘もあります。

救急安心センター「#7119」

最後に、救急安心センター「#7119」を紹介します。これは、急なケガや病気をして救急車を呼ぶべきか判断に迷った時、専門家からアドバイスを聞ける電話相談窓口です。

医師、看護師、相談員が話を聞いて、救急車を利用すべきか、急いで病院に行くべきか、受信できる医療機関はどこかを案内してくれます。

いざという時の判断が出来るように覚えておいた方がいいダイヤルです。

まとめ

私たちがケガや病気をした際に、命を守るのが救急医療です。しかし、救急車の運行はひっ迫しており解決策が求められています。

日本でも、救急車有料化が適切か否か、考えなければいけないフェーズに来ているのかもしれません。

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