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【被選挙権年齢引き下げ】メリット・デメリットは?問題点、訴訟や海外事例なども紹介!

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被選挙権年齢引き下げに対する賛成・反対意見とは?

2023年、選挙への立候補年齢の引き下げを求める訴訟が起こされたことをご存じでしょうか。

2016年には選挙権年齢が18歳に引き下げられましたが、一方の被選挙年齢は戦後から変わっていません。この記事では、近年、日本でも求められるようになった被選挙権年齢の引き下げについて、その理由や賛成・反対意見について解説します。

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選挙権(投票権)・被選挙権とは?

選挙権とは、選挙を通じて私たちの代表を「選ぶ」権利です。一方で、被選挙権とは選挙に立候補する権利のことで、投票によって「選ばれる」ことからこのように呼ばれています。

時代や国によって、選挙権や被選挙権のルールは大きく異なります。かつての日本では、高額な税金を納めることや男性であること、皇族や華族など特定の身分であることが条件として定められており、とても平等な選挙制度とはいえないものでした。こうした制度的な差別は、戦後になってようやく撤廃され、現在では性別にかかわらず、一定の年齢以上になれば選挙権・被選挙権が与えられるようになりました。

日本の政治は、国レベルでも地方でも、選挙で選ばれた代表者が議会を構成し、そこでの話し合いを通じて政策や法律・条例などを決定します。このため、日本は議会制民主主義であるといわれます。

選挙権(投票権)・被選挙権の現行制度は?

投票する権利である選挙権と、立候補する権利である被選挙権では、権利を得る年齢が異なります。また、立候補できる年齢も、衆議院議員か参議院議員かなど、立候補する先によって異なるルールがあります。

選挙権の条件

先ほど述べたように、現在、日本では「普通選挙」といって、基本的に年齢のみが条件となる選挙制度が採用されています。国政選挙か地方選挙かにかかわらず、日本国籍であれば、18歳以上になると誰でも投票することができます。戦後は長らく20歳以上であることが条件でしたが、若者の政治参加を促すために公職選挙法が改正され、2016年からは18歳以上で投票できるようになりました。

ただし、地方選挙の場合は、その地域に3か月以上住んでいる必要があります。また、引っ越し先で住民登録を行っていない場合も、選挙名簿には反映されません。

被選挙権の条件:国政選挙

国政選挙には、衆議院議員と参議院議員の2種類があります。衆議院では25歳以上で立候補できるのに対して、参議院は30歳以上でなければ立候補できません。また、どちらも日本国籍であることが条件です。

被選挙権の条件:地方選挙(都道府県)

地方の政治は、都道府県レベルと市区町村レベルに分かれています。各都道府県のリーダーである知事に立候補するには、30歳以上である必要があります。一方、都道府県議会の議員であれば、25歳以上で立候補することができます。

また、都道府県議会議員選挙に出馬するには、選挙権と同様に、選挙の行われる都道府県内に3か月以上住んでいること、日本国籍であることが条件となっています。

なお、都道府県知事に関しては、居住要件はございません。

被選挙権の条件:地方選挙(市区町村・基礎自治体)

市区町村の場合は、立候補するのが市区町村長か議会議員かに関係なく、25歳以上で立候補することができます。

また、基礎自治体議員の場合も、都道府県議会議員選挙と同じように、対象の地域に3か月以上住んでいること、日本国籍であることが条件です。なお、市区町村長といった首長にも、居住要件はございません。

市区町村などの地方政治については、決定された政策の効力がその地域内に限られることから、一定期間そこに住んでいる外国人にも参政権を与えるべきではないかという議論もありますが、今のところ日本で外国人に参政権を認めた自治体はありません。

被選挙権年齢引き下げのメリット・賛成意見

近年、日本では被選挙権年齢の引き下げに関する議論が少しずつ取り上げられるようになっています。というのも、20・30代の議員が極端に少ないことが問題視されているからです。たとえば、衆議院では465人中13人(約2.8%)、参議院では248人中たったの3人(約1.2%)しかいません。では、被選挙権を引き下げ、若い議員を増やすことで、どのような変化が期待されているのでしょうか。

若者の問題意識が政治に反映されやすくなる

議会では、多様な立場の人の意見を反映した議論が行われることが理想ですが、年配層に大きく偏った議員構成では、決定される政策も偏ってしまいます。特に、ジェンダーやセクシュアルマイノリティ、SNS、働き方の変化、晩婚・未婚化など、若者を中心に起こっている新しい社会課題について、世代の異なる議員に理解してもらうのはなかなか難しいという現実があります。このため若い議員が増えることで、議論に若者の視点が取り入れられるようになり、高齢者中心の政策から若者のための政策が増えることが期待されているのです。

若者が政治を自分事として捉えにくい

現在、日本では議員の大多数を50代以上が占めています。2016年には選挙年齢が引き下げられましたが、そもそも自分たちの意見や立場を代表してくれていると思える候補者がいなければ、投票することは難しいですよね。そうなると、候補者も議論されている政策もどこか他人事に感じてしまいます。被選挙年齢が引き下げられ、若い議員が増えれば、若者がより政治を身近なものとして感じられるようになるのではないでしょうか。

被選挙権年齢引き下げのデメリット・反対意見

一方で、立候補年齢の引き下げは必要ないと考える人も存在します。反対意見にはどのようなものがあるのでしょうか。

若い候補者は社会経験が乏しい

より若い年齢で立候補できるとなると、社会の対する知識や経験が十分でない議員が当選するのではないか、と懸念する意見があります。とりわけ、日本では年配者=経験豊富な先輩としてみなす考え方があり、こうした前提からある程度の年齢以上の政治家を望む声があると考えられます。

選挙への関心が高まるとは限らない

立候補年齢を引き下げることで、若者の政治参加を促すことができるという意見に対して、懐疑的な見方もあります。特に、選挙権年齢の引き下げ後も依然として若者の投票率が低いままであることから、被選挙権年齢を下げても同じようにあまり効果がないのではないか、という懸念があるようです。

被選挙権年齢を引き下げた国はある?

実は、近年、国際的に立候補年齢を引き下げる機運が高まっています。

一院制のトルコでは段階的に変更され、2006年に30歳から25歳、2017年にはさらに18歳へと引き下げられました。アジアの身近な国である韓国でも、2021年に25歳から18歳へと引き下げられました。また、イギリスやフランス、ドイツでは、被選挙権の年齢が引き下げられて、いずれも選挙権年齢と一致する18歳となっています。

引き下げの理由としては、やはり若者の政治参加を促したり、政策に多様な意見を反映したりすることが目的となっているようです。

日本国内の被選挙権年齢引き下げへの取り組み

それでは、日本では被選挙権年齢の引き下げに向けて、どのような取り組みが行われていいるのでしょうか。

立候補年齢引き下げ訴訟

2023年の全国統一地方選挙では、8人の20代が、規定の年齢に満たないにもかかわらず、あえて知事選や市議選に届け出をしました。当然、立候補届は「不受理」となったのですが、実はこれは被選挙権年齢の引き下げを求める訴訟を起こすためのアクションでした。

実際に立候補できなかったという事例をつくることで、18歳で選挙権を得られるにもかかわらず、25歳、30歳まで被選挙権がないのは若者の政治参加の機会を奪っていると裁判所に訴えられるようになるのです。

2023年7月に起こされたこの訴訟は、現在も審議中で、2024年9月には5回目の弁論が予定されています。

選挙チェンジチャレンジの会

2022年2月、新しいスタイルの選挙運動で地方議員になることを目指す若者や女性の支援を目的に、選挙チェンジチャレンジの会が立ち上げられました。

2020年、川久保皆実さんは、仕事と子育てを続けながら、はじめて市議会議員として立候補し、見事当選します。従来はどこかの政党に所属したり、選挙事務所をつくったりして、大金をかけなければ当選できないと考えられていましたが、川久保さんはSNSや子育ての時間を上手く活用した選挙活動で無理なく当選しました。

そのような彼女の経験から学びたいという声からつくられたオンライン相談会には、これまで100人以上が参加し、32人が当選しています。

まとめ

この記事では、そもそも選挙権・被選挙権とは何か、なぜ今被選挙権年齢の引き下げが求められているのかについて解説しました。

若者の政治的無関心や、少子高齢化が社会課題である現代日本において、立候補年齢について考え直すことが必要なのかもしれません。

この記事が、みなさんの政治参加について考えるきっかけになれば幸いです。

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政経百科編集部
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