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【放送法】問題点や改正案、国会議論などをわかりやすく

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放送法とは?NHK問題など

放送法という言葉はよく聞かれます。しかし、その実態はよくわからないという人も少なくないのではないでしょうか。ここでは放送法について解説します。

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放送法ができた経緯

放送法は1950(昭和25)年に制定された法律です。目的は放送を公共の福祉に適合するよう規律し、その健全な発達を図るためでした。日本放送協会(NHK)のほか一般放送事業者などにも規定されています。放送局に問題がある場合、管轄官庁である総務省によって電波の停止が可能になると定められていますが、現在まで適用された例はありません。
放送法ができたきっかけは先の戦争である第二次世界大戦がきっかけでした。戦時中、日本のメディアは軍部が発表する「大本営発表」をそのまま垂れ流していました。実際は負けているのに戦果を大きく発表し続けたのです。この反省から放送の独自性を保つために放送法が定められました。放送法により、放送局は国家や政治から干渉を受けることなく自由な番組作りができると定められたのです。

政治的公平性

放送法では、放送事業者は自由な番組作りができると定められていますが一定の制限があります。放送法第4条では「政治的公平に公平であること」が求められています。わかりやすいのが選挙報道でしょう。選挙が告示されると、各政党、候補者の取扱いが公平になされます。事前の予想では当選の可能性が低い候補者や政党の名前も紹介されるのは「政治的公平」に配慮した結果です。
こうした動きに関しては、2016年の選挙をめぐるテレビ報道に対しBPO(放送倫理検証委員会)が「量的公平」ではなく「質的公平」を求めるよう意見を発表しました。各候補者や政党の時間を同じに扱うのが「量的公平」です。対してある選挙区で有力な競合する候補者が2人いた場合、ほかの候補者を取り上げるよりも2人の候補者に焦点を絞って報道をした方が視聴者の利益になるのではないかと考えるのが「質的公平」となります。

国会での議論

放送法が求める政治的公平をめぐっては、2023年に国会で紛糾したことはよく知られています。立憲民主党の小西洋之参議院議員が、2014年に自民党の高市早苗衆議院議員が総務省大臣を務めていた時代の内部文書(行政文書)を公開しました。
そこには総務省の放送法が定める「政治的公平」をめぐる解釈の見直しに関する内容が記されていました。それまでの政府の放送法の「政治的公平」に対する解釈は「一つの番組ではなく放送局全体としてバランスの取れたものであるか」を判断するものでしたが、内部文書では一つの番組でも「政治的公平」かどうか判断すべきと、解釈の変更を礒崎陽輔首相補佐官(肩書は当時)が主張していると記されていました。これが事実ならば、政府が放送局の内容に関して、現在よりも強い意見を求められることになるため、国会は紛糾しました。この文書は公文書であることは確定したものの、高市議員は「一部は捏造されたもの」と否定しています。

改正議論

放送法は、70年以上前に定められたものであり、現代にそぐわないものとして改正議論も存在します。特にこれまで取り上げてきた4条の「政治的公平性」をめぐっても議論があります。NHKは「公平性」を担保するため特定の企業の商品の名前が言えません。さらにNHKの受信料支払いは放送法に定められた義務とされていますが、こちらもテレビチューナーが搭載された受像機を保有していた場合は、NHKを観ていなくとも支払う必要があるため批判が起こっています。放送法を時代に即してアップデートしていく必要はあるのかもしれません。

まとめ

放送法は戦争の教訓をもとに、1950(昭和25)年に定められました。各放送局は政治的公平などを遵守しつつ自由な番組作りが可能となると定められていますが、近年では時代にそぐわない部分もあるのではないかと、内容をめぐって改正議論も生じています。

参考文献

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政経百科編集部
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