【児童労働問題とは】世界・日本の現状と解決に向けた取り組み
【解説】児童労働をなくすためにできることはある?
児童労働と聞いて思い浮かべるイメージはなんでしょうか。遠い発展途上国の問題だと思ってはいないでしょうか。しかし、児童労働は先進国である日本の私たちとの生活とも結びつきがあります。児童労働の実態と解決に向けた取り組みについて考えてみましょう。
児童労働とは何か?
まず児童労働の定義を確認します。国際連合の専門機関の一つである国際労働機関(International Labour Organizatio:略称ILO)では、国際的に児童労働の廃止・撤廃を求める国際基準として1973年に「就業が認められるための最低年齢に関する条約」(第138号)を採択しました。さらに1999年には「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約」(第182号)も採択されています。
1973年の条約では、最低年齢は義務教育終了後の原則15歳と定められました。ただし、軽労働については13歳以上15歳未満、危険有害業務は18歳未満は禁止と定められました。開発途上国(発展途上国)の例外として就業最低年齢は14歳、軽労働は12歳以上14歳未満と定められました。2022年6月現在、世界の174カ国が批准しています。
1999年の条約では上記の内容に加えて「最悪の形態の児童労働」の禁止と撤廃を求めました。その内容は以下の4つです。「人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働」「 売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、斡旋、提供」「 薬物の生産・取引など不正な活動に使用、斡旋、提供」「 児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働」です。こちらは187カ国が批准しています。
児童労働に従事されている子供はかつてより減りつつありますが、2021年時点で世界で約1億6千万人の子供たちが児童労働をしていると言われています。その数は世界の子どもたちのうち約10%に相当します。性別では男の子は9700万人、女の子は6300万人ほどと言われています。
世界の児童労働問題
児童労働は主に発展途上国で行われている問題だと言えます。その内容を見てゆきましょう。
サハラ以南のアフリカに多い
児童労働に従事させられている子供が多いのがサハラ以南のアフリカです。この場所では4人に1人の子供が児童労働をしています。その背景にあるものは貧困であり、サブプライムチェーンの構造的な問題もあります。サブプライチェーンは原料調達に始まり、製造や在庫管理までの一連の流れを指します。児童労働によって生み出された原材料が、いくつもの行程を経て、私たちの手元に届いている流れがあります。
ほかの地域では?
サハラ以南の地域のほかに児童労働が多いのが中央・南アジア、東南アジア、北アフリカから西アジアの地域、ラテンアメリカ・カリブ諸国です。ヨーロッパや北アメリカにも少数ながらいます。発展途上国の児童労働は約85%を占めます。発展途上国だけの問題ではなく日本を含んだ先進国でも160万人ほどの児童労働の従事者がいるとされています。
農林水産業分野での児童労働
児童労働をさせられている子供はどういう仕事をしているのでしょうか。児童労働の約70%は農林水産業分野に見られます。特に小規模な家族経営の農場などで児童労働に従事させられている子供がいます。家畜の管理や世話などを子供がさせられているのです。ありていに言えば「家の手伝い」とも言えるわけで、彼ら彼女らは無給で働かされており、学校へ通い教育を受ける機会も逸しています。
サービス業での児童労働
農林水産業に次いで多いのがサービス業です。約20%に相当します。その内容は路上での物売りや、車の窓拭き、市場でモノを運ぶ仕事や、家事使用人として働く子供もいます。海外旅行先などで物売りの子供に遭遇した経験がある人は多いのではないでしょうか。彼らは児童労働者なのです。
工業・製造業
工業や製造業の分野でも児童労働者がいます。約10%に相当します。バングラディシュの縫製工場、インドでのマッチ製造、タイやミャンマーでのエビ加工工場などで児童労働が問題となっています。縫製工場では服や靴が作られています。エビ加工工場で生産されたものは、ふだん私たちが手にして口にしている冷凍食品やインスタント食品の一部となります。こうして見ると児童労働は私たちにも無関係な話ではないのです。
日本の児童労働問題について
児童労働は発展途上国だけの問題ではありません。日本にも児童労働の問題が存在します。特定非営利活動法人ACEが2019年12月にまとめた報告書によれば、人身取引、児童ポルノ、出会い系ビジネスと援助交際、JKビジネスなど性にまつわる分野での児童労働の実態が記されています。このほか建設業の分野でも児童労働が存在していると報告されています。
【児童労働問題】解決に向けた取り組み
それでは児童労働問題を解決するにはどういった取り組みが必要なのでしょうか。
教育の普及
児童労働に従事させられている子供たちにとってもっとも問題なのは、教育を受ける機会を逃している点です。教育が受けられないと、文字の読み書きや計算といった基本的なスキルを身につけられません。そうなると成人しても、所得の低い仕事に就かざるを得なくなってしまいます。子供たちに教育を受けさせる機会を普及させることで、中長期的に見れば児童労働を減らす契機となります。
企業の意識改革
児童労働はサブプライチェーンの構造の中に存在しています。製品の大本となる原材料の調達や製造の段階で児童労働が存在しています。企業にとっても、そうした実態をしっかりと把握し、フェアトレードが実現した体制を整える必要があります。企業が調達している原材料や製造の過程で児童労働が行われていないかなどをしっかりと監視、管理する必要があると言えます。あるいは売上の一部を児童労働の撤廃に向けた資金として寄付を行うといった取り組みも有効です。
消費者の意識改革
児童労働の解決には企業ばかりではなく、私たちの意識改革も必要です。今、手にしている製品が安く手に入るのにはどういった理由があるのかを、あらためて考えてみる必要があるでしょう。製品がどこの国で作られているのかといったことを意識していくことも必要です。児童労働の解決へ向けた取り組みを行っている事業の支援や、団体への寄付といった行動も良いでしょう。
まとめ
児童労働は主に12~15歳以下の子どもたちが世界の発展途上国で農林水産業やサービス業、製造業などに従事させられている問題を指します。世界には1億6千万人の児童労働物がいるとされ、これは世界の子供のうち約10%に相当します。児童労働はサハラ以南のアフリカのほか発展途上国が85%を占めますが、先進国にも存在します。日本にも性的搾取に関わる児童労働の問題が存在します。
参考になるサイト
- 国際労働機関|児童労働に関するILO条約|https://www.ilo.org/tokyo/areas-of-work/WCMS_239915/lang–ja/index.htm
- WorldVision|児童労働の現状|原因や解決策を詳しく解説!私たちにできることは?」|https://www.worldvision.jp/children/trafficking_1.html
- ユニセフ|児童労働|https://www.unicef.or.jp/aboutunicef/aboutact04_02.html
- ACE|児童労働入門講座|https://acejapan.org/childlabour/entrance
- ACE|日本にも存在する児童労働:その形態と実例|https://www.unicef.or.jp/aboutunicef/aboutact04_02.html