【選択的夫婦別姓制度】賛成・反対の理由やメリットは?提訴についても解説
「選択的夫婦別姓」とは
選択的夫婦別姓とは、夫婦が望む場合には結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の苗字を称することを認める制度のことです。民法等の法律上では、苗字・姓のことを氏と呼んでいることから、法務省では「選択的夫婦別氏制度」と呼ばれています。
現行の制度における夫婦とは
現在の民法上では、男性または女性のどちらかが必ず苗字を変えなければなりません。実情としては、男性側の苗字を選び、女性が苗字を変えることが大半となっています。女性の社会進出が進むにつれ、現行の夫婦が同じ苗字にしなければならない制度について、職業生活や日常生活上での不便・不利益やアイデンティティの喪失などが指摘されるようになりました。
ちなみに、厚生労働省が取りまとめた「人口動態統計」によれば、夫の氏を選択する夫婦の割合は以下のとおりです。
年度 | 割合 |
---|---|
令和元年 | 約95.5% |
平成27年 | 約96.0% |
平成22年 | 約96.3% |
平成17年 | 約96.3% |
平成12年 | 約97.0% |
平成7年 | 約97.4% |
なお、選択的夫婦別姓・選択的夫婦別氏制度上では、選択的な制度であることから、従来通りに夫婦で同じ苗字にすることも、夫婦が別々の苗字にすることも選べる制度となっています。
そもそも夫婦同姓っていつから?
そもそも夫婦が同じ苗字を名乗るようになったのはいつからなのでしょうか?同じ姓を名乗るといった慣例ができたのは、明治時代からだと言われています。
明治31年に施行された戦前の民法では、家族は同じ姓を名乗ることが規定され、夫婦は同じ姓を称するという制度が出来ました。
また、明治時代以前には、そもそも庶民が姓を名乗ることが禁じられていました。
現行制度における司法の判断、提訴裁判の結果
過去に選択的夫婦別姓を認めないことについて、憲法違反なのではないかといった提訴があり、裁判が行われたことがあります。平成27年の判決では、選択的夫婦別姓を認めないことに関して、憲法違反ではないとの判決が出ました。この判決は、選択的夫婦別姓を否定するものでも、現行の夫婦同氏制度を肯定するものでもなく、国会で判断すべき事柄であるとされました。
この判決において、
・家族の構成員であることを対外的に示す
・家族の一員としての実感を持つことの意義
・いずれの親とも等しく同じ苗字を名乗ることの利益
などがあげられましたが、夫婦別姓を希望する人が選択できるようにすることへの合理性を否定するものでは無いとされました。
判決の全文はこちら:https://www.courts.go.jp/app/files/hanreijp/546/085546hanrei.pdf
選択的夫婦別姓導入後の別氏夫婦と同氏夫婦の違い
法務省の見解によると、別氏夫婦と同氏夫婦の間には、それぞれ苗字を一緒にしているか、違う苗字にしているのか、といった違いだけで他に違いは無いとしています。
夫婦間の権利・義務、子どもに対する責任や義務に関しても同じものを持ちます。
婚姻届を出していない事実婚の夫婦との違い
事実婚であると、親権が原則母親のみとなる、配偶者控除や医療費控除が得られない、婚姻届を提出している法律婚のケースよりも保険や賃貸の契約に支障が出る、相続権がない等といったデメリットがあります。
その点、選択的夫婦別姓が導入されれば、そういったデメリットを解消しつつ、夫婦別姓を選択できるようになります。
旧姓使用の拡大
戸籍上の選択的夫婦別姓を認めなくとも、同姓夫婦でも旧姓の使用が出来る範囲を拡大していくことによって、不利益を解消していこうとする動きもあります。
住民票やマイナンバーカード、運転免許証、パスポートには旧姓を併記することができます。
また、民間企業においても、通称として旧姓を使用することが認められている企業も増えています。
内閣府男女共同参画局HP:https://www.gender.go.jp/research/kyusei/index.html
選択的夫婦別姓への賛成意見
選択的夫婦別姓には、どのような賛成意見があるのでしょうか。まずは、苗字を変更すること(夫婦で同一の苗字にすること)によって、現実的に不利益が生じていることが挙げられます。また、苗字を含む氏名(旧姓氏名)に個人のアイデンティティを持つ人がいること、夫婦同姓を強制することが婚姻の障害となっている可能性があることも理由として挙げられます。
また、プライバシー保護の観点から結婚したことを知られにくいことなども論点に挙がっています。
選択的夫婦別姓への反対意見
選択的夫婦別姓に反対する意見としては、夫婦同姓が日本の社会に定着した制度であること、家族が同姓となることで夫婦・家族の一体感が損なわれること、子供の苗字をつける時に問題になることなどが挙げられます。旧姓使用の拡大や扶養・相続の制度の再整備によって、課題解決が可能との立場もあります。
まとめ
政治の話題を語る上において、よく上がるテーマのひとつに選択的夫婦別姓があります。このテーマについて知っておくことで、家族観や政治的価値観を考えるきっかけになれば嬉しいです。
参考になるサイト
法務省|選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について|https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html