【不登校問題】甘えで学校に行くべき?原因・定義、対応や解決策、自治体の取り組みなどを解説!
フリースクール、学びの多様化学校などの学校外で学べる環境も!
年々増加している不登校児童生徒。その背景にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は不登校問題について詳しく解説していきます。

不登校とは?不登校の定義
文部科学省の調査では、不登校児童生徒とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。
しかし、病気と診断されていなくとも、精神的な不調が隠れている可能性もあるため、「不登校だから…」という画一的な対応ではなく、一人ひとりの状況に合わせて対応していくことが大切です。
不登校の原因
不登校になってしまう原因には様々なものがあります。原因を考えずに、甘えと捉えてしまうのも、解決には繋がりません。
一言で不登校といっても、それぞれの生徒・児童に様々な要因があるため、一概に原因や解決策を特定出来るわけではありません。
不登校の原因には、以下のようなものがあります。
学校生活によるもの
- 友人関係や教師との関係をめぐる問題
- 学業の不振
- 部活動等への不適応
- 校則等による問題
- 転編入学や進級時の不適応
家族生活によるもの
- 家庭の生活環境の急激な変化
- 親子関係をめぐる問題
- 家庭内の不和
個人の問題によるもの
- 病気による欠席をきっかけに行けなくなってしまう
- 睡眠障害
- メンタル疾患
- その他本人に関わる問題
学校・教育委員会側の不登校への対応
増え続ける不登校児童生徒に対して大人たちはどのような対応を取っているのでしょうか。ここでは学校と自治体に焦点を当てて見ていきます。
学校での対応
文部科学省は学校は不登校児童生徒に対するきめ細かく柔軟な対応が必要だとしています。文部科学省が提唱する不登校への対応は次のようになっています。
- 教員を支援する学校全体の指導体制の充実
- スクールカウンセラー等との効果的な連携協力
- 校内・関係者間における情報共有のための個別指導記録の作成
- 不登校児童生徒の学校外の学習把握と学習の積極的な評価の工夫
- 教職員の資質の向上
- 不登校児童生徒の立場に立った柔軟なクラス替えや転学等の措置
- 養護教諭の役割と保健室・相談室等の環境・条件の整備
全国の自治体における不登校問題への取り組み
近年、全国的に不登校児童生徒数は増加の一途をたどっており、文部科学省の調査によると、令和3年度には全国の小中学校で約24万4,940人が不登校となり、過去最多を更新しました。
このような状況を受け、国は平成29年に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)を制定し、不登校は「問題行動」ではなく、どの子どもにも起こりうるという基本理念を示しました。
この法律に基づき、個々の不登校児童生徒の状況に応じた多様な教育機会の確保が求められています。
過去3年間の自治体の議事録からは、不登校問題に対する認識が深まり、多様な学びの場の確保と個別最適化された支援の重要性が強調されていることが明らかになりました。
不登校特例校の検討と推進
多くの自治体で、公教育の選択肢として不登校特例校の設置や推進が議論されています。不登校特例校は、学習指導要領の弾力的な運用が認められ、不登校児童生徒の状況に応じた特色ある教育課程を編成できる点が特徴です。
尼崎市は、不登校児童生徒の増加に対応するため、既存の教育支援室や学習支援教室に加え、新たな公教育の選択肢として不登校特例校の調査研究を精力的に進めています。
「不登校特例校は、公教育を多様性のあるものにしていくための仕組みと捉えており、本市においても、今年度、精力的に調査研究を進めているところでございます。六月初めには京都市の夜間中学校併設の不登校特例校を視察し、対象生徒、教育課程の編成、教員やスクールカウンセラー等の職員配置、施設整備など、設置に伴う様々な課題を把握してまいりました。」 (令和5年6月定例会(第14回)、尼崎市 2023年6月20日)
尼崎市は、民間主導のフリースクールとは異なり、卒業資格や進路指導を提供できる不登校特例校を公教育の選択肢として重視しており、生徒のペースに合わせた「個別最適化」されたカリキュラムの実現を目指しています。
前橋市は、国に対し、不登校特例校の一層の設置促進と、その設立・運営に対する財政的・制度的支援を強く要望しています。
「不登校特例校は、全国に二十一校(公立十二校含む)しか設置されておらず、私立では経済的負担から入学を断念する児童生徒も少なくない状況です。これらの課題に対し、本市は国に対し、都道府県や市区町村による不登校特例校の設置が進むよう、設立・運営に関し、さらなる財政的・制度的支援を図ることを速やかに実施するよう求めています。」 (令和5年_意見書案第04号、前橋市 2023年3月29日)
フリースクール等民間施設との連携と経済的支援
不登校児童生徒の多様な学びの場として、フリースクールの重要性も認識されています。しかし、その経済的負担が課題となっています。
前橋市は、フリースクールが不登校児童生徒の社会的自立に向けた学びの場として重要な役割を果たすと認識しつつも、国の就学支援金がない現状を指摘し、保護者の経済的負担軽減のための支援を国に求めています。
「全国に約五百か所あるとされるフリースクールには国の就学支援金がなく、一部の自治体による助成にとどまっている現状を指摘。保護者の負担が年間約四十万円に上るなど、家庭にとって大きな経済的負担となっていることを問題視しています。本市は国に対し、フリースクールをはじめとした学校以外での多様な学習活動に対する保護者負担軽減のための経済的支援を早急に実施するとともに、フリースクール等に対する財政支援を実施することを速やかに実施するよう求めています。」 (令和5年_意見書案第04号、前橋市 2023年3月29日)
オンライン学習の検討状況
オンライン学習は、不登校児童生徒にとって自宅で学習を継続できる有効な手段となり得ますが、その導入には慎重な姿勢も見られます。
香取市では、不登校児童生徒への支援として「香取市教育支援センター・ふれあいステーション」を運営していますが、オンライン学習については、現状のニーズと今後の可能性を考慮しています。
「オンライン学習につきましては、現状では支援希望者が少ないため対面での現体制を維持する方針ですが、今後増加した場合には検討の余地があるとしています。」 (令和4年12月定例会、香取市 2022年12月13日)
これは、オンライン学習の導入には一定のコストや体制整備が必要であり、まずは対面でのきめ細やかな支援を優先しつつ、将来的なニーズの変化に対応していく姿勢を示しています。
個別最適化された支援の重視
不登校の原因が多岐にわたることから、一人ひとりの状況に応じた「個別最適化」された支援が重視されています。
尼崎市は、不登校特例校の検討において、生徒のペースに合わせた少人数指導など、個別の状況に合わせたカリキュラムを特徴として挙げています。
「特例校では、学習指導要領で定められた教育内容や総授業時間数を必要に応じて減らしたり、個別の状況に合わせて少人数指導をしたりと、『個別最適化』されたカリキュラムが特徴であり、尼崎市も生徒のペースに合わせた支援を目指しています。」 (令和5年6月定例会(第14回)、尼崎市 2023年6月20日)
香取市も、各学校が児童生徒や保護者に寄り添い、不登校の要因解消に努める適切な支援を行うとともに、教育委員会が学校と連携し、個々の状況を把握・共有しながら関係機関やスクールソーシャルワーカーとの情報交換を行うなど、きめ細やかな対応を通じて個別最適化された支援を目指しています。
「市は、各学校が児童・生徒や保護者に寄り添い、不登校の要因解消に努める適切な支援を行うとともに、教育委員会が学校と連携し、個々の状況を把握・共有しながら関係機関やスクールソーシャルワーカーとの情報交換、啓発資料配布等を実施しています。」 (令和4年12月定例会、香取市 2022年12月13日)
これらの自治体の取り組みは、不登校児童生徒とその保護者に対し、以下のような影響を与えると期待されます。
- 多様な選択肢の提供: 不登校特例校やフリースクールへの支援強化は、学校以外の学びの場を求める児童生徒にとって、より多くの選択肢を提供します。これにより、画一的な教育システムになじめない子どもたちが、自分に合った環境で学びを継続できる可能性が高まります。
- 経済的負担の軽減: フリースクール等への経済的支援が実現すれば、保護者の経済的負担が軽減され、経済的な理由で学びの機会を諦める子どもが減少することが期待されます。
- 個別ニーズへの対応: 個別最適化された支援は、不登校の原因や状況が一人ひとり異なる子どもたちに対し、よりきめ細やかで効果的なサポートを可能にします。これにより、子どもたちが安心して学び、社会的に自立するための基盤を築くことができます。
- 公教育の多様化: 不登校特例校の設置推進は、公教育自体が多様なニーズに応えられるよう進化していくことを意味し、すべての子どもが安心して学べる環境づくりに貢献します。
今後自治体の取り組みで必要なこと
包括的な支援体制の構築: 不登校問題は、学校、家庭、地域、医療、福祉など多岐にわたる要因が絡み合っています。自治体は、関係機関との連携を強化し、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充、教員研修の充実を通じて、子ども一人ひとりに寄り添う包括的な支援体制を構築する必要があります。
不登校特例校の設置促進と財政支援: 公教育の選択肢として不登校特例校の役割は大きく、国や都道府県によるさらなる財政的・制度的支援が不可欠です。自治体は、地域のニーズに応じた特例校の設置を積極的に検討し、その運営体制を強化する必要があります。
フリースクール等民間施設との連携強化と経済的支援: フリースクールは多様な学びの場として重要な役割を担っています。自治体は、民間施設との連携を強化し、保護者の経済的負担を軽減するための独自の助成制度の創設や、国への働きかけを継続することが求められます。
オンライン学習の戦略的導入: オンライン学習は、地理的制約や体調面の問題を抱える不登校児童生徒にとって有効な手段となり得ます。ニーズの把握に努め、効果的なオンライン学習プログラムの導入と、それに伴う教員の研修やICT環境の整備を進めることが重要です。
不登校はだめ?学校に行かせるべきか
世の中には不登校を批判する人もいます。その理由は学校に行くことで得られるものが大きいからです。学校で得られる力の例として次のようなものがあります。
- 社会性が身につく
- 忍耐力など「非認知能力」が鍛えられる
- 異なる視点から考える力がつく
一方で、オンラインで学習ができる環境が整備されたり、無理に学校に行かせる必要は無いとする声もあります。
不登校に対しては、保護者や教職員の間で様々な考え方があり、一概に全て不登校はだめで学校に行かせるべきとも言えません。
学校に行かずに学習できる環境
学校に行かない・行けない状況であっても、将来のために学習ができる環境もあります。
学校に行かずに学習できる環境はどういったものがあるのでしょうか。
学びの多様化学校
学びの多様化学校とは、文部科学省が正式に認可している一条校にあたりますが、学習指導要領にとらわれず、不登校の児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成・実施しているのが特徴です。
不登校生が通いやすいよう、始業時間を遅くしたり、授業時間を短かくするなど、独自に工夫している学校が多くあります。
教育支援センター
教育支援センターは、主に小・中学校を長期間休んでいるお子さんを対象にした、学校に通わなくても学習を進めたり、集団生活を学んだりできる公的機関です。
運営は市区町村が教育委員会と連携して行っているため、学校との連携が密であるのが特徴で、通所が学校の「出席扱い」になるケースも多いです。
フリースクール
NPOや企業などが運営する民間の教育機関で、主に不登校や引きこもりの子供に学習やコミュニケーションの機会を提供し、”第二の居場所”として支援をおこなっています。
周りの人が不登校になったら
もし周囲の人が不登校になったらどのような対応を取るのが正解なのでしょうか。
ここでは親と友達の2つの立場から適切な対応について見ていきます。
親の対応
どうしても子供には学校に通ってほしいと思う保護者も多いと思いますが、子供にその思いを押し付けることが適切では無い事もあります。
しっかりと子供の話に耳を傾け、休んでも良いことを伝えることが効果的かもしれません。専門家への相談や場合によっては転学・転校なども視野に入れた方がいいこともあります。
また、不登校の親のうつ状態という問題もあり、親だけで問題を抱えずに、親族や専門家に相談をするということが重要です。
友達の対応
クラスメイトが不登校になったときはその子を特別扱いしないという考え方を持つことが重要です。
過剰な配慮が、本人を追い詰めてしまう可能性があります。
また、実は学校に来てほしいという発言が傷つけてしまうケースもあります。不登校の子は行きたくても行けないというケースも多く、このような発言も自分を追い詰めてしまう原因になりかねません。
まとめ
不登校問題は、それぞれに様々な事情があり、一筋縄では解決できません
解決に向けて、周囲の人のサポートが必要とする一方で、サポートする側も一人で抱え込まないことが大切です。



参考になるサイト
- 文部科学省|不登校の現状に関する認識|https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf
- 文部科学省|不登校の対応について|https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/003.pdf
- 教育新聞|【不登校】急増する不登校児童生徒をどう支援するか 自治体の模索|https://www.kyobun.co.jp/article/20221027-06
- shingaku-fs.jp|「学校に行く意味」を聞かれたら?本当の意味と親ができる対応とは|https://www.shingaku-fs.jp/tsunaguba/column/distress/gakkou-ikuimi
- キズキ共育塾|「不登校の友達」を思いやるときの3つのお願い|https://kizuki.or.jp/blog/futoko/futoko-friend/

