学校教育

【教員の働き方改革】具体例・事例やできること、給特法などの課題を解説!

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学校教育の現場の働き方改革を考える。給料・残業・部活動・給食など

近年、教員の長時間労働がしばしば取り上げられるようになりました。

そもそも日本では社会全体として残業の多さや過労死が問題となっていますが、教員の働きすぎには、学校教師という職業特有の問題が背景にあるようです。

この記事では、なぜ教員は長時間労働に陥りやすいのか、その改善策としてはどのようなものがあるのかなどについて、解説します。

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教員の職場環境の課題

教員の仕事はブラックだと揶揄されることも多いですが、それはなぜなのでしょうか。ここで主な問題として挙げられている点を3つ、確認します。

授業以外にも様々な業務を任されている

本来、教師の仕事の本分は子どもたちに勉強を教えることであるはずです。ところが、多くの教員は授業や授業準備、教材研究にはあまり時間を割けておらず、その他の業務に時間を奪われてしまっているのが実態です。

たとえば、授業や授業準備以外に教員が担っている主な業務には、以下のようなものがあります。

  • 提出物の確認
  • テストの作成、採点
  • 成績評価、通知表の所感
  • 集会、連絡帳、学級通信などの学年・学級運営
  • 運動会、修学旅行などの学校行事
  • 生徒指導
  • 給食、掃除
  • 部活動、クラブ活動
  • 登下校の見守り
  • 夜間、地域の祭りなどのパトロール
  • 保護者、地域対応
  • 職員会議
  • 事務仕事

これらはほんの一例で、具体例を挙げればきりがありません。

事務処理から学校外で起こった子どものトラブル対応まで、教育以外にも様々な業務を担うことが教員の慣習となっているのです。

結果として、子どもの教育のために割ける時間は少なくなるという悪循環に陥っているといえます。

勤務実態が所定の労働時間を大きく上回っている

今となってはすっかり長時間労働のイメージが定着してしまった教員ですが、その実情はどうなっているのでしょうか。

地域によって異なりますが、一般的に教員は午前8時頃〜午後5時頃が定時とされており、休憩をはさんで一日8時間ほどの労働が想定されています。しかし、実際に多くの教員は子どもたちの登校よりずっと早くから出勤している上に、授業が終わった時点で既に午後4時頃、放課後に委員会や部活動があれば当然その監督や指導も必要です。定時を過ぎる頃になってようやく自分の業務に取りかかれるのですから、残業が常態化してしまうのは想像に難くありません。

また、その教員の残業時間についても、非常に長いことが問題となっています。文部科学省によると、後述する働き方改革によって、近年は少しずつ残業時間が短くなってきているといわれています。

ただし、これには懐疑的な見方もあり、成果を示すために在校時間が減った一方で、結局は自宅に仕事を持ち帰っているだけなのではないかという懸念もあります。

全日本教職員組合によると、2022年10月時点の平均残業は96時間10分で、過労死ラインである80時間を大きく上回ってしまっています。

教員の担い手不足

かつては安定した職として人気のあった教員ですが、近年では深刻な人手不足が問題となっています。その要因としては、団塊世代の高齢化によって現役教員が次々に定年を迎えていること、ブラックな職場として知られるようになり、教員の志望者が大きく減少していることが挙げられます。かつては倍率が10倍を超えることもあったといわれる教員採用試験ですが、現在では2.0倍を切っている地域も少なくありません。

また、特性をもつ、外国にルーツをもつなど支援を必要とする子どもが増えていたり、複数人で指導するチーム・ティーチングが普及したり、子どもの数に対して必要とされる教員数が増えていることも一因だと考えられます。

さらに、最近ではうつ病などの精神疾患を原因とする休職・退職者が増加していることも、教員の担い手不足に拍車をかけています。文科省によると、2022年の精神疾患による休職者は約6500人と過去最多で、このうち2割は翌年4月までに退職していました。原因としては、長時間労働や、保護者からの過度な要望や苦情、教員間の業務量の差、コロナ禍のコミュニケーションの取りにくさなどが挙げられています。

教員の働き方改革の歴史

こうした労働環境の過酷さは、教員の過労死が取り上げられたことで徐々に知れ渡るようになりました。

2016年、文科省は教員の勤務実態を調査し、長時間労働の実態が明らかになると、学校における一連の働き方改革に着手したのです。

明らかになった教員の長時間勤務

文科省の調査によると、2016年、月45時間以上の残業をしていたのは、小学校で約82%、中学校では約89%の教員でした。

過労死ラインである月80時間を超える教員も、小学校で約33%、中学校で約58%と、部活動のある中学校では時間外労働が特に深刻化していたことがわかります。

勤務時間の管理徹底と上限ガイドライン

そこで、文科省は2019年に勤務時間に関するガイドラインを発表しました。

ガイドラインでは、これまで曖昧であった勤務時間の考え方が見直され、外形的に(=目に見える形で)把握できる在校時間や、職務として行う研修、児童生徒の引率などがまとめて「在校等時間」として定義されました。

また、残業時間が際限なく延長されるのを防ぐために、1か月あたり45時間以内、1年間で360時間以内に収めることが求められました。

学校や教員が担うべき業務とそうでないものを明確に

前述のように、教員の業務は多岐にわたりますが、それらは慣習として引き継がれてきたもので、どこまでが教員が本来担うべき業務なのか、明確な指針はありませんでした。そこで、文科省は働き方改革に向けて、これまで学校・教員が担ってきた業務を3つに分類しました。

基本的には学校以外が担うべき業務

  • 登下校に関する対応
  • 放課後~夜間の見守り、児童生徒が補導されたときの対応
  • 地域ボランティアとの連絡調整

学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務

  • 調査、統計などへの回答
  • 児童生徒の休み時間における対応
  • 校内清掃
  • 部活動(民間団体への移行など)

教師の業務だが、負担軽減が可能な業務

  • 給食時の対応
  • 授業準備(スクールサポートスタッフの導入など)
  • 進路指導(外部人材との連携)
  • 支援が必要な児童生徒・家庭への対応(専門スタッフとの連携)

各政党の教員の働き方改革に対する姿勢

では、教員の長時間労働について、各政党はどのように考えているのでしょうか?2022年の参院選での公約を参考に、主要政党の教員の働き方改革に対する考えを見てみましょう。

自由民主党

  • 小学校35人学級の整備
  • 小学校高学年での教科担任制の推進
  • スクールサポートスタッフや部活動指導員の充実
  • 教職調整額を少なくとも10%に増額
  • 管理職手当の改善
  • 学級担任手当の創設

公明党

  • 小学校、中学校ともに35人学級
  • →将来的には30人の少人数学級
  • スクールサポートスタッフ、部活動支援員、ICT支援員などの充実
  • 教員業務の厳選
  • 部活動の地域移行
  • プログラミング、語学、ケースワーカー、アスリートなど、免許制による多様な人材活用
  • 給特法を含めた教員の処遇検討

立憲民主党

  • 教職員定数の充実
  • スタッフ職の増員
  • 非常勤教職員の環境改善
  • 給特法の廃止を含めて、教職員の処遇改善を行う
  • 部活動は地域移行など根本的な見直し

日本維新の会

  • 校務分掌、部活動の見直し
  • 校務の情報化
  • 給特法の廃止
  • 養成、採用、兼業副業など、教員免許の抜本的な見直し

国民民主党

  • 教職員の定数増加、処遇改善
  • 臨時加配ではなく、いじめや不登校に対応する専門家の配置
  • 給特法の廃止

日本共産党

  • 教職員定数の増加
  • 私学助成の増加
  • 残業代を支給する制度の確立
  • 学習指導要領における過密カリキュラムの緩和
  • 業務の断捨離
  • 短時間勤務のための代替教員の配置
  • 定年後も給与を100%支給
  • 経験豊富な非正規教員を正規採用

給特法改正議論と今後の見込み

公立校の教員の給与は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の略で、通称「給特法」と呼ばれる法律によってルールが定められています。

この給特法は、教員の長時間労働の一因として批判されてきたのですが、それはなぜなのでしょうか?

今後、給特法の問題点は改正されていくのでしょうか?

給特法はなぜ問題視されているのか

教師という職業の特徴として、どこまでが職務上の労働で、どこからが自主的な研鑽なのか、線引きが難しいことが挙げられます。そこで、公立校の教員には、残業代が出ない代わりに、「教職調整額」として月給が4%上乗せされることとなっています。これを定めているのが給特法です。民間企業でいうと、みなし残業制度に近いルールかもしれません。予め一定程度の賃金を上乗せしておくことで、教員特有の勤務形態に対応しようとしたのです。

ところが、この上乗せ額4%というのは、1966年当時の平均残業時間、月あたり約8時間を基準に決められたもので、当然60年近く経った現在の実態にあったものとはいえません。もともとは教員の高待遇を保障するはずのものでしたが、今ではこのルールが教員の「定額働かせ放題」を招いているとして、批判されるようになってしまったのです。

2022年に施行された改正給特法

2019年に改正給特法が成立し、2022年4月1日から施行されています。改正法では、1年単位の「変形労働時間制」と「休日のまとめ取り」が導入されました。変形労働時間制とは、1年間を平均して週あたりの労働時間が40時間を超えないことを条件に、繁忙期の労働時間を1日につき10時間、1週間につき52時間まで増やすことを可能にする制度です。その代わり、学校の長期休暇期間を利用して、教員にまとめて休日を取るよう推進することが定められています。

しかし、夏休みといっても、教員は研修などの業務に追われている場合が少なくありません。長時間労働が助長されるだけで、休日のまとめ取りは結局できないままで終わってしまうのではないか、と現場からは懸念の声も出ています。

今後の給特法改正の見込み

2024年4月、給特法のさらなる改正に向けて、教職調整額を現在の月給4%から10%に引き上げることを求める素案が提出されました。現在の上乗せ額は50年以上前の平均残業時間を反映したものなので、実現すれば教員の待遇改善につながると考えられます。

一方で、時間に応じた残業代は払わないというルールはそのままなので、結局のところ長時間労働そのものは変わらないという批判もあり、教員や専門家からは給特法の根本的な見直しが求められています。

まとめ

この記事では、教員の長時間労働の背景や、働き方改革に向けた取り組み、残業代不払いを定めた給特法について解説してきました。

結局のところ、教員が雑務に忙殺されている状況では、子どもと向き合う時間は失われるばかりです。子どもに質の高い教育を保障するためにも、教員の働き方にはまさに抜本的な改革が求められているのかもしれません。

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