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【入管法】2024年改正の賛成・反対意見や可決の経緯、問題点などを解説!

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【出入国管理法】入管法とは?改正法の施行はいつから?

技能実習の廃止に伴って、最近、ニュースで「入管法」が取り上げられることが増えていますが、そもそもどんな法律なのでしょうか?これまで何度も改正されているので、分かりにくい部分もあるかもしれません。この記事では、入管法の概要と主な改正内容について、わかりやすく解説します。

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入管法とは?

入管法とは、「出入国管理及び難民認定法」という法律の通称で、日本人の出入国、外国人の入国・滞在、難民などに関するルールを定めたものです。日本国籍か外国籍であるかにかかわらず、日本の国境をまたぐあらゆる人は、この法律に則って手続きを踏むことになります。

外国人の場合には、日本への入国や滞在を希望する理由に応じて様々な身分が決められており、大きく分けると、短期滞在者(観光目的など)と中長期在留者(永住者、定住者、留学生、技能実習生…など)という在留資格があります。

入管法の成立と主な改正

入管法のそもそもの始まりは、戦後、ポツダム命令の一つとして、出入国のルールを定めるよう求めた出入国管理令でした。これに基づいて、入管法は1951年に公布・施行され、70年以上経った現在まで適用されています。とはいえ、その時々の社会情勢に合わせて、その内容は何度も改正されてきました。大きな変更があった改正は、以下の通りです。

1989年:在留資格「定住者」の創設

  • 日系3世までを対象に、職業の制限なく日本に滞在できるように
  • 1980年代後半からの好景気による人手不足を補うことが目的

1993年:「技能実習」の導入

  • 1960年代からあった外国人の研修制度が基に
  • 「人材育成を通じた国際貢献」が名目だったが、実質的には安い労働力として使われた
  • 法律上は「労働者」ではなく「実習生」

2011年:「在留カード」の導入

  • それまで在留外国人を管理する方法であった「外国人登録制度」が廃止に
  • 在留外国人は日本人と同じように住民票がつくれるようになった
  • 在留外国人の身分証として「在留カード」ができた

2018年:「特定技能」の創設

  • 介護、建設など、人手不足の特に深刻な12の分野で、外国人を労働者として受け入れる
  • その分野の熟練した技能、高度な日本語能力が必要
  • 1号と2号があり、2号として認められると家族の呼び寄せができる

2023年:難民申請3回目以降で強制送還が可能に

  • 長期収容者が増えていることを背景に
  • 入管での死亡事件をきっかけに2021年に一度廃案になったが、ほぼ同じ内容で成立
  • 不適切な難民審査の実態が問題に(審査官の知識・人手不足など)

入管法の問題と2024年改正

2024年6月14日、入管法の新たな改正法案が成立しました。これまで国内外から批判されてきた「技能実習」を廃止し、代わりに「育成就労」を新設するための改正です。技能実習にはどのような問題があり、また新制度ではどのような点が変更されたのでしょうか?

技能実習制度の問題点

前に述べたように、技能実習は、途上国から実習生を呼び寄せて日本で知識・技能を身に着けてもらい、帰国後に母国でそれを活かしてもらうことで国際貢献する、という名目のもとできた制度でした。しかし、実際には人手不足を補うための労働力として受けられているのが現実で、制度としての矛盾が指摘されてきました。しかも、身分としては「実習生」であるため「労働者」としての権利が法律で守られず、劣悪な労働環境が多く存在することが問題視されていました。

また、実習生の多くは来日前に仲介業者から多額の手数料を求められて、多額の借金を背負っており、それを返済するために労働条件が悪くても被害を訴えにくい状況に置かれていました。

新制度、育成就労とは

新設された育成就労では、制度の目的が国際貢献ではなく「人材確保」であることが明記されました。また、労働者としてみなされ、これまでは原則として不可能であった「転職」が認められるようになります。期間は基本的に3年以内ですが、技能や日本語能力を高めて特定技能に移行すれば、長期的に日本で働くことも可能となります。

2024年改正のメリット・賛成意見

しかし、今回の入管法改正には賛否両論あります。

まず、評価されている点としては、長年批判されてきた制度の名目と実態の矛盾が解消されたことです。国際貢献という綺麗ごとではなく、国内で不足する労働力を補うことが目的であるとはっきり示されたことは、大きな進歩であるといえます。

また、実習生は転籍が認められないため、劣悪な労働環境から抜け出せず搾取されたり、耐え切れず失踪したりする外国人が後を絶ちませんでしたが、育成就労では一定の条件の下で転職が可能になりました。労働者としての権利保障に向けて前進したといえるでしょう。

2024年改正のデメリット・反対意見

一方で、この改正案は大きな反対を押し切って成立したものでもあります。

まず、育成就労制度については、転職が可能になったとはいえ、実ははじめの1~2年は転職することができません。斡旋された先が悪質な雇用者だったとしても、最低1年はその場所で働き続けなければならない、ということになります。また、外国人に高額な手数料を要求しないよう、仲介機関を規制するための有効な手段が定められていないことも指摘されています。

さらに、育成就労の創設に合わせて、永住権の取り消し要件が追加されたことが問題視されています。これまでも、1年以上の実刑を受けたとき、永住権の申請で虚偽の申告をしたときなどは、永住権が取り消される決まりがありました。ところが、今回の改正では在留カードの不携帯や、税金の不払いといった理由でも、永住権の取り消しが可能になりました。税金の未納については、日本人と同様に行政処分を受けるルールが既にあるにもかかわらず、永住権まで取り消すのは差別的だと批判されています。

入管法関連の訴訟

これまで入管や難民に関する訴訟はあまり取り上げられてきませんでしたが、2021年に起こった入管の死亡事件以来、皮肉にも注目が高まっているといえます。ここでは、入管法に関連する訴訟事例を見てみましょう。

難民「不認定」が覆された裁判

2023年5月、難民不認定とされたカメルーン男性が、その処分を取り消すよう国を訴えた訴訟で、東京地裁は男性が母国で迫害を受ける可能性があるとみなし、難民として正式に認めました。

男性は母国で反政府活動を行い、逮捕状が出ていましたが、国はこれを証拠が不十分だとして認めていませんでした。裁判では逮捕状がを伝える新聞記事の信憑性が認められ、男性は無事に難民として認められましたが、彼が来日したのは2012年で、それから10年以上もかかったことになります。

入管施設で起きた死亡事件

2021年3月、名古屋の入管施設でウィシュマさんが亡くなる事件が起きました。

スリランカ出身の彼女は、収容されてから約半年後、体調が悪化しはじめました。ところが職員に体調不良を訴えても病院には連れて行ってもらえず、ついには嘔吐、吐血をして、そのまま施設内で亡くなってしまったのです。

ウィシュマさんの家族は、現在、国に対して賠償を求める裁判を起こしていますが、入管側とは全面的に対立しています。

まとめ

この記事では、入管法とは何を定めた法律なのか、これまでどのような改正がなされてきたのかについて、解説してきました。日本で暮らす外国人は年々増加しており、そのルールを定める入管法について考えることは、かれらとの共生について考えることでもあります。

超高齢社会の日本にとって、特に外国人労働者を重要視する見方も増えています。

そのような社会状況の中で、外国人の権利保障について踏み込んだ議論が求められているといえるでしょう。

参考になるサイト

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政経百科編集部
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