社会・環境

【ペット殺処分】理由や目的、日本や海外のゼロへの取り組み事例などを解説!

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殺処分とは?現状と解決策を考える

現在、ペットとしてよく飼われる猫や犬が殺処分されています。

殺処分はやむを得ない場合もありますが、できるだけその状況は避けるべきだとされています。

そのためにどのような取り組みが行われているのでしょうか。今回は殺処分とは何なのか詳しく解説していきます。

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殺処分とは?

殺処分とは人間の利害に基づいて動物を殺すことを指します。人間に危害を及ぼすおそれのある動物や、不要となった動物が対象になります

なお、中でも獣医療の延長線上にあり、苦痛からの解放を目的とした治療行為のことを安楽死とも言います。

何のために殺処分するの?殺処分の目的

人はどのような理由で殺処分を行うのでしょうか。ペット殺処分が行われる目的は大きく分けて「譲渡することが適切ではない」ケースと、「それ以外」のケースのそれぞれがあります。ここではそれぞれのケースについて見ていきます。

譲渡することが適切ではない場合

何らかの事情により、譲渡することが「適切ではない」と判断された場合に行われる殺処分です。主に病気やケガ、衛生上の問題などが理由として挙げられています。また、飼い主などをよく咬んだ履歴を持つなど、攻撃性が高いと判断された場合でも殺処分されることがあるようです。

病気やケガ、衛生上の問題の例には、以下のようなものがあります。

  • 負傷や病気等による苦痛が著しく、治療の継続が困難だと判断された
  • 狂犬病予防法に基づく殺処分
  • 収容中および譲渡後にほかの動物に危害を及ぼす恐れが高いと判断された
  • 動物衛生又は公衆衛生上問題となる感染症等にかかっている場合
  • 重篤な病気や著しい障害などがある場合
  • 闘犬として訓練されていた犬でほかの動物や人に危害を及ぼす可能性があると判断された

それ以外の場合

それ以外のケースとは「譲渡することが適切ではないケース」には当てはまらないが、保管や譲渡が困難であると判断された場合に行われる殺処分です。

予算や人員などの制約により、1週間程度で殺処分を行うところもあれば、原則殺処分は行わない保護センターもあり、場所によって対応はさまざまなのが現状です。

保管や譲渡が困難であると判断される場合の例には、以下のようなものがあります。

  • 適切な譲渡先が見つからない場合
  • 施設の収容制限など、物理的制限により飼育が困難な場合
  • 大型などの理由により、適切な飼育管理ができない場合

日本の殺処分の数

2018年度の年間殺処分数は犬・猫合計で約3.8万頭(犬7,687頭、猫30,757頭)と言われている。これは、一日に換算すると殺処分される犬・猫が105頭にのぼるということです。しかし10年前(2008年)の殺処分数は約27万6千頭(犬82,464頭、猫193748頭)であるため、殺処分数は約24万頭減少しています。

世界の殺処分の現状

殺処分は世界中で行われていますが、各国ではどのような現状があるのでしょうか。今回は3国に焦点を当てて見ていきましょう。

イギリス

イギリスでは、英国動物虐待防止協会、バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム、ドッグズ・トラスト、キャッツ・プロテクションなどが動物保護施設を運営し、飼い主斡旋等を行っています。

イギリスの動物保護団体を対象とした2010年の調査では、動物保護施設における捨て犬・猫等の年間受入頭数は、犬が9 〜13万頭、猫が13 〜 16万頭であり、そのうち施設で殺処分される割合は、犬が10.4%、猫が 13.2%と推定されています。

野良犬については、基本的には自治体が7日間留置し、その間に所有者が見つからなければ、新たな飼い主への譲渡、民間の動物保護施設等への譲渡、殺処分のいずれかとなっています。

また動物保護施設の多くで、年間を通して施設に空きがない状態となっており、入居頭数の抑制が大きな課題となっています。

アメリカ

アメリカでは、自治体が運営する公共の動物保護施設のほか、全米人道協会、米国動物虐待防止協会、ベストフレンズ・アニマルソサエティ、アレイ・キャット・アライズなどの民間の動物保護団体の施設があります。

全米人道協会の統計では、1970年代には1200〜2000万頭もの犬猫が殺処分されていました。全米人道協会の2012〜2013年の推計では全米の動物保護施設に入居する年間600〜800万頭の犬猫の約4割に相当する年間約270万頭の犬猫が殺処分になっているとみられています。

ドイツ

ドイツでは、国内の500 か所以上の動物保護施設ティアハイムが飼い主斡旋等を行っています。

ドイツ動物保護連盟はティアハイムの運営指針で基本的に殺処分してはならないと定めていますが、治る見込みのない病気やけがで苦しんでいる動物については動物福祉の観点から獣医師による安楽死が行われています。

またドイツ連邦狩猟法は、狩猟動物を保護する目的で野良犬・猫の駆除を認めており、その頭数は年間猫40万頭・犬6万5千頭に達すると指摘する動物保護団体もあります。

小池百合子都知事が殺処分ゼロを公約に

小池百合子都知事が掲げる「7つのゼロ」公約のうちの1つに「ペット殺処分ゼロ」があります。

具体的な方策として、引取数減少・譲渡機会の拡大・動物愛護相談センターの機能の強化を挙げていました。

この公約は2020年までに達成するとしていましたが、実際には達成できているのでしょうか。

東京都独自の定義

小池都知事は2018年度には「殺処分ゼロ」を達成したと発表しています。

しかし、東京都の「殺処分」は独自の定義であり、小池都知事はその定義に則った結果達成しているとしています。その定義は次のようになっています。

  1. 苦痛からの解放が必要、著しい攻撃性を有する、又は衰弱や感染症によって成育が極めた困難と判断される動物について、動物福祉等の観点から行うもの
  2. 引取り・収容後に死亡したもの
  3. それ以外の致死処分

この定義のうち、東京都は③だけを殺処分と表現しています。

全国の定義

東京都の定義とは違い、全国は上記の①と③を「殺処分」と定義しています。

そのため、小池都知事の公約は全国の定義に従うと未達成ということになります。実際に東京都の2018年度の「動物福祉等の観点から行った致死処分」は146件存在しています。

しかし全国には①の殺処分数も0である県や負傷動物以外は①を含めて殺処分数0を実現している県もあります。そのため「動物福祉等の観点から行う致死処分」をゼロとすることも不可能ではないと言えるでしょう。

殺処分を減らすための取り組み

殺処分数は減少しているものの、まだまだ行われているのが現状です。今後さらに減らしていくためにどのような取り組みが行われているのでしょうか。

神奈川県動物保護センター

「動物ふれあい教室」といった動物との触れ合いによる情操教育や、マイクロチップの普及啓発等を行っています。ボランティアと協力した取り組みによって、ここ数年間連続して犬・猫ともに殺処分ゼロを達成しています。

株式会社シロップ

保護犬猫と飼いたい人をつなぐマッチングサービス「OMUSUBI(お結び)」を提供しています。サービスを通して、個人に安心して納得のいくマッチングを提供したり、保護団体が譲渡活動にかける手間を省くといった付加価値を提供することを目指しています。

ペットのおうち

事情によりペットを飼育できなくなった人やペットの保護をしている人と、里親になりたい人が交流できるWEBプラットフォームを提供しています。

認定NPO法人 ピースウィンズ・ジャパン

ピースワンコ・ジャパンプロジェクトでは、捨て犬や迷い犬の保護・譲渡のほか、保護した犬を「人を助ける犬」である災害救助犬やセラピー犬に育成する活動も行い、様々な現場に派遣しています。スタッフには、単なるボランティアではなく、職業として活躍できる場を用意しています。

NPO法人 東京キャットガーディアン

殺処分数の高い猫に焦点を当て、賃貸マンションに猫がついてくる「猫付きマンション」や、キャットフードや猫砂など日常のお買い物で保護活動に参加出来る仕組みの「ShippoTV」 の運営など、様々な活動を通じて「シェルターから伴侶動物をもらう」 選択肢の認知向上に努めています。

まとめ

殺処分を行う目的はさまざまですが、各所でいろいろな取り組みが行われています。

しかし、知名度が低いためなかなか解決に進まないのが現状です。今後どのようにして解決に向かっていくのでしょうか。

参考になるサイト

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政経百科編集部
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